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2019年6月4日(火)

きょうの潮流

 「ひどすぎて声もありません」。当時の本欄はこう書き出しています。社会主義を標ぼうする国が非暴力を貫く学生や市民の運動に戦車や銃を向ける。怒りで胸のふるえが止まらないと▼30年前、この国があらわにした蛮行におののいた人たちに共通した思い。1989年6月3日夜から4日未明にかけて中国が軍を投入し、民主化や自由を求める運動を武力で鎮圧した天安門事件。千とも万ともいわれる犠牲者は今も闇に消されたままです▼「学生は真摯(しんし)に国や社会のことを心配していて…。みんな中国の未来のことを考えていた」。関係者などを取材した安田峰俊さんのルポ『八九六四』で、北京の夜間大学生として運動に加わった男性が語っていました▼彼らが思い描いた国のかたちとはほど遠い現在の中国、習近平体制に批判的な市民や言論の弾圧、監視の強化が、それを裏付けています。学生運動のリーダーだった王丹氏は「今でも自由と民主主義を求めて代償を払い続けている人がいる」と▼いまだに血の弾圧をなきものとする中国政府。事件に携わった人たちは「物は豊かになったが、政治的には後退している」と口々に▼時を同じくして、世界は大きく揺れ動きました。ベルリンの壁が崩され、2年後にはソ連崩壊。どんな政治や社会であれ、権力が人権や自由を奪う国家は、それを求める人びとのたたかいがあるかぎり、いずれ滅びゆく。いまや50歳をすぎ、国の移り変わりを見てきた先の男性はいいます。私は希望をすてない―。


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