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2019年5月28日(火)

きょうの潮流

 「こういう監督が、日本にいることを、ぜひ知ってもらいたい」。高倉健さん最後の主演映画となった「あなたへ」。出演を決めたのは、降旗(ふるはた)康男監督の存在がありました▼ともに高齢。「もう一本、監督と仕事をしておかないといけないなと思って」。後に通信社のインタビューで語っています。20作もタッグを組んできた盟友は降旗色に仕上がった作品をいつも感心していました▼駅、鉄道員(ぽっぽや)、ホタル、少年H…。時代に翻弄(ほんろう)される人間の悲哀や人情味あふれる姿。心にしみる作品をつくり続けながら、解釈は多様でいいと。「映画というのは、見る人がそれぞれに受け取って完成していくもの。心に何かを起こす起爆剤になってもらえればいい」▼偉人伝や修身のような話は撮りたくない、失敗した人や負けを選んだ人、不器用な人を描きたい―。それが映画監督としての信念でした。戦争にかかわる作品には、庶民の営みを見守る温かいまなざしがありました▼安倍政権による憲法9条への攻撃に危機感を募らせていました。戦争は小さなことが積み重なって忍び寄ると、「映画人九条の会」結成の呼びかけ人にもなり、選挙ではいつも日本共産党の躍進を強く願っていました▼本紙の創刊記念に寄せた談話には長いつきあいを振り返りながら、「いろんな困難のなかで歴史を支えてきた人たちの活動は本当に尊い、見習うべきものです」と。それはまた、84歳で亡くなった降旗監督が追い求めてきた世界に相通じるものなのかもしれません。


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