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2019年5月28日(火)

違法捜査と証拠隠し断罪

布川国賠訴訟 「開示は義務」

東京地裁判決

 茨城県利根町布川で1967年に起きた強盗殺人の「布川事件」の犯人とされ再審無罪判決が確定した桜井昌司さん(72)が、国と茨城県に損害賠償を求めた裁判で27日、東京地裁(市原義孝裁判長)は警察・検察による違法な取り調べと証拠隠しを断罪し約7600万円の賠償を命じました。判決は検察・警察に証拠開示を義務づける踏み込んだ判断をしました。


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(写真)勝利判決の喜びを支援者らに語る谷萩弁護団長(マイクを持つ人)と桜井さん(その右)=27日、東京地裁前

 判決は、事件当日に兄のアパートに泊まったというアリバイについて、茨城県警の捜査官が取り調べで、兄がアリバイを否定していると桜井さんにウソを告げたことや、現場付近で「(桜井さんを)みた」とウソの目撃証言で虚偽自白を迫ったことなどを「偽計を用いたもので違法」と断罪しました。

 布川事件の裁判で、警察・検察は桜井さんの取り調べを録音したテープは1本しかないと繰り返し説明していました。しかし、後の第2次再審請求審で、検察から他のテープが提出されます。このテープは、取り調べ初期を記録。テープには桜井さんの“自白”と多くの矛盾する内容や編集した跡があるなど、“自白”の信用性を疑わせるものでした。

 これについて、市原裁判長は「記憶違いとは到底考えられないから、警察官は故意に虚偽の証言をしたと認められて、違法」と指摘。その上で「この違法行為が存在しなければ、遅くとも第2審判決で強盗殺人事件について無罪の判決が出て、ただちに釈放された蓋然性(がいぜんせい)が高い」とのべました。

 また市原裁判長は「開示しない合理的理由がない場合には、検察官は、その証拠開示義務を負うというべき」と言及しました。

 裁判長が判決理由を述べる間、桜井さんは傍聴席の支援者に向け笑顔をみせ、閉廷後は傍聴席から拍手があがりました。

 桜井さんは29年間の獄中生活の後に仮釈放され、11年に再審無罪が確定していました。記者会見で桜井さんは「ここに杉山がいて『昌司よかったな』といってほしかった」と、事件の共犯とされ、ともに冤罪で服役した故杉山卓男さん(2015年に死去)に思いをめぐらせました。

 さらに「まじめな思いで検察官、警察官になった人がまじめな思いでいられる組織になってほしい。そうするために、『冤罪犠牲者の会』の仲間ともっと声をあげていくつもり。仲間の力になれたことも『ああ、俺の人生良かったな』と思いながら判決を聞いた」と語りました。

 弁護団の谷萩陽一団長は「画期的な判決。捜査の違法性と証拠隠しの違法性を認めた。正面から証拠開示の義務があると認めた。証拠開示の前進にとって非常に大きな判決だった」と評価しました。


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