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2019年4月30日(火)

きょうの潮流

 そこは鉄条網と監視塔に囲まれた「砂漠の刑務所」でした。寒さに震えて目を覚ますと、床板や部屋のすき間から吹き込む砂ぼこりに体中がまみれていました▼米ロサンゼルスから北へ320キロ、シエラネバダ山脈のふもとにあるマンザナー。酷暑と寒風が吹き荒れる殺伐とした地は太平洋戦争中、日系人を連行した最初の強制収容所がありました▼「ジャップはどこにいようとジャップだ」「日本人の血が一滴でも混じっていれば収容所に送り込む」―。日本軍による真珠湾攻撃後、敵性外国人として排斥された日系人は苦労して築いてきた財産や土地を取り上げられました▼そのとき、ヒステリックになって人種差別をあおったのが政治家やメディアでした。植え付けられた偏見は戦後も続き、各地の収容所で苦難を味わった人たちの証言、国に謝罪と補償を求める運動が起きました▼そのマンザナー収容所の跡地で50回目の節目となる追悼式典が開かれました。「人種を理由に差別することは二度とあってはならない」。参加者は白人至上主義や憎悪の広がりを止めなければならないと呼びかけました▼「マイノリティーに対する恐怖と偏見を誇張するのは簡単なことだ。それは、そのような恐怖を推し進めようとする人々の政治的目的を果たすことが多い」。強制収容の不当を訴えたフレッド・コレマツさんは生前、差別を再び正当化するような空気に警鐘を鳴らしていました。歴史から学ばなければ、民主主義はつねに危機にさらされると。


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