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2019年1月22日(火)

主張

子どもの貧困対策

根本に踏み込んだ打開策こそ

 子どもの貧困対策推進法が施行されて5年です。同法は、貧困の解決を求める世論と運動を背景に国会で全会一致で制定されました。しかし、安倍晋三政権の取り組みの立ち遅れは際立っており、それどころか生活保護費カットなど貧困解消に逆行する政策を続けています。施行5年を受け安倍政権は施策を見直す予定ですが、従来の延長線にとどまる可能性が濃厚です。拡大する貧困と格差をどう解決するかは、日本の政治が直面する大問題の一つです。現状打開に向け、踏み込んだ対策づくりとともに、貧困の大本をただす政治へ転換することが必要です。

深刻な困窮世帯の実態

 子どもの貧困対策推進法は2013年に成立し、14年1月に施行されました。貧困の概念が定義されていないことや、貧困率の削減目標が盛り込まれないことなど不十分さはありますが、社会全体で子どもの貧困解決へ向けた取り組みを進める一歩となる法律です。

 安倍政権は同年8月に同法に基づく対策大綱を決定しました。ところが内容は「教育支援」などを項目に示したものの、全体として実効性の乏しい政策の列記に終始し、関係者の失望を広げました。

 法施行から5年―。子どもの貧困率(平均的な所得の半分に届かない世帯にいる18歳未満の割合)は13・9%で、7人に1人が貧困にある深刻な実態が続いています。子どもだけでもきちんと食事をさせたいが、それができない。病気になっても受診を我慢する…。憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」ができない世帯が少なくない現実を、これ以上放置することはできません。

 重大なのは、安倍政権のすすめる大企業優先の経済政策「アベノミクス」が貧困と格差の拡大に拍車をかけていることです。さらに生活保護費の削減と制度改悪を次々と強行し、生活困窮世帯に追い打ちをかけています。昨年10月から行われている保護費の段階的削減は、13年の過去最大の削減に続く大きな規模です。しかも生活扶助基準の引き下げだけでなく、一人親世帯を対象にした母子加算も減額する容赦のないものです。

 暮らしの土台を支える生活保護費を削ることは、子どもの貧困対策に真っ向から逆らう、異常なやり方です。全国各地で保護費削減の撤回を求める訴訟や異議申し立てが広がっています。この切実な声に応え、生活保護費カットを直ちにやめ、元に戻すべきです。

 今年10月の消費税率10%への引き上げは、「もう削る出費がない」と悲痛な声を上げる困窮世帯にとって過酷な仕打ちです。増税と“引き換え”に実施する「教育無償化」も貧困世帯の実態や願いとかみ合っていません。10%への増税は中止するしかありません。

暮らし支える施策を

 子どもの貧困対策の抜本的見直しは不可欠です。対策大綱見直しに関する政府の有識者会議でも、子どもの貧困の原因は世帯収入の少なさであり、親の経済支援の位置づけを高める必要性を説く声が出されました。子どもの貧困を解消する基盤である世帯全体の暮らしの底上げが急がれます。安心して利用できる生活保護にする「生活保障法」への改正、最低賃金の大幅引き上げ、賃金・雇用状況の改善など、政府の本腰を入れた真剣な対策が求められます。


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