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2018年10月31日(水)

主張

埋め立て撤回停止

沖縄の民意も法も無視の暴挙

 沖縄県が名護市辺野古の米軍新基地建設を目的にした埋め立て承認を撤回したことについて、石井啓一国土交通相がその効力の執行停止を決めました。9月末の沖縄県知事選で辺野古新基地反対を掲げた玉城デニー氏の圧勝に示された民意も、法律に基づいて権力を行使するという当たり前の政治原則も乱暴に踏みにじる暴挙です。民主主義も法治主義もないがしろにした不当・違法な決定に基づいて埋め立てを再開することは到底許されません。

防衛局申し立ては違法

 米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる新基地建設をめぐり、沖縄県は8月末、翁長雄志前知事の指示に基づき、防衛省沖縄防衛局が護岸工事を強行してきた辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回しました。沖縄防衛局はこれに対抗して今月17日、「行政不服審査法」を用い、石井国交相に対し、埋め立て承認の撤回を取り消す審査請求と、その裁決が出るまで撤回の効力を失わせる執行停止の申し立てを行っていました。

 しかし、沖縄防衛局が埋め立て承認を撤回されたことに対し同法を使って審査請求や執行停止の申し立てを行うこと自体、違法行為に他なりません。

 そもそも行政不服審査法は、行政機関によって国民(私人)の権利や利益が侵害された時、その救済を迅速・簡易で公正な手続きによって行うことを目的にしています。同法が「簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図る」(第1条1項)と規定している通りです。

 しかも、同法は「国の機関」が「固有の資格」で処分を受けた場合、「この法律の規定は、適用しない」(第7条2項)とし、政府が原則的に審査請求や執行停止の申し立てをできないことを明示しています。

 沖縄県による埋め立て承認の撤回は「公有水面埋立法」に基づいています。同法は、国以外の者が埋め立てをする場合には都道府県による「免許」(第2条)を、国が行う場合には「承認」(第42条1項)を受けることが必要と定めています。国以外の私人(企業など)に対する免許制度と国に対する承認制度を明確に区別し、国には都道府県の監督を受けないなど特別な法的地位を与え、「固有の資格」を前提にしています。

 「固有の資格」にある沖縄防衛局が行政不服審査法の適用を受けないことは明白です。

 辺野古新基地を「唯一の解決策」とする安倍晋三政権の下で、沖縄防衛局の申し立てを国交相が審査するというのは文字通り「出来レース」であり、行政不服審査法がうたう「公正な手続き」に反することは言うまでもありません。デニー知事が「自作自演の極めて不当な決定と言わざるを得ない。公平性・中立性を欠く判断がなされたことに強い憤りを禁じえない」と批判したのは当然です。

追い詰められている政府

 安倍政権が行政不服審査法を乱用してまで埋め立て工事を再開しようとしているのは、沖縄の民意に追い詰められていることの現れです。辺野古新基地反対、普天間基地の即時閉鎖・撤去を求める運動と世論をさらに大きく広げていくことが必要です。


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