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2018年10月26日(金)

きょうの潮流

 息子は試験勉強をしていたところを連れていかれた―。その母親の訴えが妙に耳に残ったそうです。中東で長年取材を続けている川上泰徳さんがイラク戦争のさなかに聞いた言葉です▼当時米軍は深夜に軒並みドアを蹴破り、おとなの男性とみるや手当たり次第に連行していました。紛争地の取材は破壊や人の死という非日常ばかりに目がゆくが、そこで暮らす人びとの叫びを聞くことの大切さを気づかせてくれたと▼危険地報道を考えるジャーナリストの会が出した本のなかで語っています。同会は、自己責任論や安倍政権による報道統制に対し、なぜ危険な地域での取材が必要なのかを社会に発信してきました▼内戦下のシリアで武装勢力に拘束されていた安田純平さんが3年ぶりに解放されました。本人はもちろん、毎日無事を祈って鶴を折り続けた両親や孤独と苦しみの日々だったという妻の深結(みゆう)さんの気持ちを思うと本当に喜ばしい▼戦前の日本軍による大本営発表しかり、米軍の湾岸戦争やイラク戦争しかり。国家権力はつねに戦場を隠ぺいし、偽ってきました。だからこそ、そこに市民の目となり耳となって真実を伝えるジャーナリストの存在が欠かせません▼拘束の1年前、安田さんは本紙に語っていました。「戦争とは、私たちが権限を与えている国家が人を殺し、社会を破壊するということ。その決断が妥当かどうか私たち有権者は厳しく審査する必要があります。そのためには戦場で何が起こっているか知らなければならない」


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