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2018年9月18日(火)

主張

生活保護引き下げ

生存権の空洞化は許されない

 安倍晋三政権が10月から3年かけて強行しようとする生活保護基準の引き下げ計画に対し、利用者や貧困問題に取り組む団体などから批判と怒りの声が上がっています。基準引き下げが実行されれば、利用世帯の7割近くで保護費が減額されることになり、影響は極めて深刻です。安倍政権の経済政策「アベノミクス」で格差と貧困が広がる中で、生活保護世帯をますます窮地に追い込もうというのか。憲法に保障された生存権を掘り崩す生活保護基準の引き下げ計画は、撤回・中止すべきです。

実態無視した削減ありき

 今回の引き下げは、生活保護費のうち食費や光熱費などにあてる生活扶助が対象です。削減総額は210億円にのぼります。利用者への影響額は居住地や家族構成で異なりますが、最大5%カットされる世帯があります。都市部で子どものいる夫婦、高齢単身者などの世帯は大きな打撃を受けます。生活扶助引き下げだけでなく、一人親世帯への母子加算などの削減も合わせて実行されるため、子どものいる世帯はさらに不利益を被ります。「子どもの貧困対策」にも逆行する容赦ない削減です。

 安倍政権は今回の引き下げについて、所得が最も少ない「一般低所得世帯」と均衡をはかるためと説明します。しかし、日本全体の貧困の悪化によってこの世帯の所得は減り続けています。それに保護基準を合わせることは際限のない引き下げを招くだけです。貧困の実態を無視した「削減ありき」の乱暴なやり方そのものです。

 安倍政権下の生活保護基準引き下げは今回だけではありません。2012年末、政権復帰した安倍首相は、過去最大となる生活扶助の段階的引き下げ(総額890億円、最大10%カット)を13年8月から強行し、多くの利用世帯を苦境に立たせました。その後も期末一時扶助、住宅扶助、冬季加算の引き下げを毎年のように繰り返し、生活困窮世帯にぎりぎりの暮らしを強いています。生活保護を利用する人たちに次々と追い打ちをかける安倍政権の姿勢は、あまりに冷たく異常という他ありません。

 今年の記録的な猛暑でも、多くの生活保護利用者は、電気代節約のためエアコン使用を我慢して過ごしました。体調を崩した人も少なくありません。「食事も満足にとれない。もう削るお金がない」という人たちの保護費をさらに引き下げることは、文字通り、命に直結する大問題です。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記した憲法25条に反する事態を、拡大させることは許されません。

生活保障法への改定を

 13年からの扶助引き下げの違憲性を問う訴訟が、いま全国で1000人を超す原告の参加でたたかわれています。10月からの引き下げに対して大規模な行政不服審査請求を申し立てる動きも始まろうとしています。基準引き下げは、住民税、保育料、就学援助などの基準にも連動します。国民全体の暮らしを危うくする引き下げをやめ、引き上げに転じるべきです。

 日本では、生活保護を利用する資格のある人のうち実際に使っている人が2割程度しかおらず、国際水準からみても低すぎます。生活保護を国民の権利として位置づけ、利用しやすくする「生活保障法」改正などこそ急がれます。


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