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2018年8月29日(水)

主張

障害者雇用の偽装

国民欺き続けた根本をただせ

 事実とあまりにかけ離れた数字で国民を欺いてきたことに、強い憤りを禁じえません。中央省庁が雇用する障害者数を「水増し」した問題で厚生労働省が発表した調査結果です。昨年、障害者雇用数を約6900人としていたのに、実際は3400人余と半数にも届いていませんでした。人数を偽っていたのは国の省庁など33行政機関のうち27にのぼりました。「水増し」というレベルをはるかに超えた、でたらめという他ない実態です。なぜこんな行政ぐるみの背信行為がまかり通り、放置されてきたのか。根本にメスを入れ、責任を明らかにすることが急務です。

雇用率1%未満も相次ぐ

 問題発覚から10日余り―。「精査中」と繰り返してきた厚労省がようやく発表した「水増し」の実態は、極めて深刻なものでした。

 国が昨年公表していた障害者雇用者数のうち、半分以上が障害者手帳の確認など国の指針で定めた措置がとられず、対象になる障害者として雇用者数に算定されていたのです。適切でない算定をしたのが国機関の8割以上にあたる27もあったことは問題の根深さを改めて浮き彫りにしています。

 調査結果では、昨年の国の障害者雇用率は、法律で義務付けられた法定雇用率2・3%を大きく下回る1・19%にしかなりません。国は昨年の雇用率は法定を上回る2・49%を達成したと公表しましたが、全くの虚構だったのです。調査結果では2・3%に届かないところがほとんどでした。1%未満の機関は18になりました。

 民間企業には、法定雇用率を下回れば納付金の徴収を課す事実上の罰則があります。国の機関には、そのような罰則はありません。民間企業に障害者雇用推進を促し指導する中央省庁が、実際と異なる数字を使い、あたかも「目標」を達成しているかのように偽った―障害者行政への信頼を根本から覆す、裏切り行為そのものです。

 だいたい障害者の働く機会を増やすことで実質的に雇用率を引き上げる努力を放棄し、数字のつじつま合わせでごまかそうというやり方自体、障害者の雇用を真剣に保障しようという姿勢とは無縁のものです。偽装を横行させた構造にメスを入れることが必要です。

 今回の調査は、昨年の発表分に限られたものですが、「水増し」は1976年の障害者雇用率制度の導入当初から行われていたとの指摘もあります。40年以上にわたって多くの障害者の雇用機会を奪ってきたおそれがある大問題の全体像を、徹底的に明らかにしていくことが求められます。

 とりわけ2014年に、厚労省所管の独立行政法人「労働者健康福祉機構」で起きた障害者雇用の「水増し」事件をめぐる安倍晋三政権の対応の検証は不可欠です。当時の厚労相が「許し難い行為」と同機構を批判していたのに、なぜそれを契機にして、省庁全体の総点検を行わなかったのか。再発防止にとって、安倍政権の責任は絶対にあいまいにできません。

閉会中審査急いで実施を

 安倍政権は関係閣僚会議を開き、省庁連絡会議を設け、第三者チームで検証なども行うとしています。地方自治体の調査も実施するとしていますが、一連の問題を安倍政権任せにはできません。国会で閉会中審査を行い、政府の姿勢をただすことが急がれます。


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