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2018年6月15日(金)

ボロボロ「働き方」法案 立法根拠消えた

労働者の要求ゼロ 過労死促進の危険

 安倍政権は週明けにも「働き方改革」一括法案の採決を狙っています。しかし、「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)に労働者のニーズがあることを示せなくなり、経営者からも批判や懸念が相次いでいます。論拠もなく過労死促進の危険性が際立つばかりの法案は廃案にする以外にないことが浮き彫りとなっています。


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(写真)「働き方改革」一括法案の徹底審議と廃案を求めて声を上げる雇用共同アクションの人たち=14日、参院議員会館前

ヒアリング アリバイ作り明白

 同法案は、「働く方の働き方に関するニーズ」を実現することが提案理由です(加藤勝信厚労相、4月27日の衆院本会議)。労働者のニーズがなければ立法根拠は崩壊します。

 しかし、「残業代ゼロ制度」で労働者のニーズがあると示された「唯一の調査」は、わずか12人分のヒアリング。2015年3月2日の労働政策審議会で法案要綱が出される前にヒアリングしたのはゼロ。国会提出直前の3月31日に1人ヒアリングしただけです。

 その後も、加藤厚労相が「私自身、働く方の声をいろいろ聞いた」と答弁した直後にヒアリングが行われるなどアリバイづくりのためなのは明らかです。14日、日本共産党の山添拓参院議員の追及で、加藤氏は「労政審に出していない」と答え、立法根拠にならないと認めました。

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 もともと全労連、連合、過労死遺族がこぞって反対。労働者ニーズは「0」です。

 参考人質疑で経営者からも、コンサルティング会社社長の小室淑恵(よしえ)氏が、高プロ導入で「いい人材を逃す」と指摘。地方公聴会で三州製菓の斉之平伸一社長は「社員が望むことはまったくない。過労死がないようお願いしたい」と述べました。

 衆院で修正合意した維新からも東徹参院議員が「本人が撤回できるようにしたが、撤回しにくい状況があるのは、それもそうだ」と欠陥を認めており、破たんしています。

労働関係データ 虚偽・ねつ造だらけ

 厚労省が「議論の出発点」と呼んだ労働時間データは、裁量労働制部分がねつ造により撤回、一般労働者部分も虚偽データなどで2割も削除。新たに、他の資料からも虚偽データが発覚しました。

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 それは、裁量労働制や変形労働時間制など「1日8時間」原則を緩和した労働時間制度の労働者と、一般的労働者の割合を集計し比較したデータです。

 ところが、「管理監督者」を一般労働者に含めて、緩和した労働時間制度の労働者を少なく見せていました。共産党の倉林明子参院議員の追及に加藤氏は「正確性に欠けていた」と虚偽データだと認めました。(7日)

 管理監督者を区別すれば、すでに7割程度が緩和された労働時間制度で働いていることとなり、新たに高プロを導入する必要性が認められなくなります。

 山添議員は14日、厚労省委託調査(04年)で、管理監督者の半数が経営決定権も人事権もない「名ばかり管理職」だと指摘し、「新たな時間規制の適用除外の拡大などもってのほかだ」と強調しました。

 年収1075万円以上という年収要件も、共産党の吉良よし子参院議員の追及で、月給は20万円程度にして、残り800万円を最後に支払う方法でも合法だと判明。吉良氏は、「労働者は満額支払われるまで高プロを解除することができない」と批判しました。

 加藤氏は、残業相当分が月100時間になれば医師面接があると弁解しますが、地方公聴会で産業医経験のある竹田透氏は、「面接の事後措置を放置する事業主もいる」と指摘し、残業が止まる保障がないことが分かりました。

残業上限規制 30日150時間超も可

 残業の上限規制も、単月100時間、平均80時間の「過労死ライン」を容認したうえに抜け穴だらけです。

 共産党の高橋千鶴子衆院議員は、残業を月をまたいで集中させれば30日間で150時間以上の残業も可能と告発。加藤氏は「あり得る」と認めました。

 倉林議員は、ソニーの残業協定では1日23時間労働(休憩1時間あわせ24時間)が可能だと告発し、「1日、1週単位の上限とインターバル規制(次の勤務まで休息時間を保障する制度)が必要だ」とただしました。加藤氏は、企業の対応を理由に「インターバルは努力義務とした。上限はギリギリ実現可能だと労使で合意したものだ」としか答えられず、実効性がないことを否定できませんでした。

 さらに研究開発業務は上限規制が適用除外とされ、自動車運転、建設、医師は上限規制を5年先送り。自動車運転は5年後も年960時間とされるなど抜け穴だらけです。中小企業には適用を1年延期し、罰則付き監督指導を「配慮」する規定が盛り込まれました。

 残業は現行の月45時間、年360時間までとする大臣告示の法制化こそ実効性ある規制となることが明りょうになっています。


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