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2018年5月3日(木)

チッソ社長「水俣病救済終了」

暴言に怒り広がる

 水俣病が公式に確認されて62年がたった1日、加害企業チッソの後藤舜吉社長は、熊本県水俣市で開かれた「犠牲者慰霊式」に参列した後、記者団に「水俣病特別措置法(特措法)の救済は終了した」とのべました。

 地元紙「熊本日日」(2日付)によると、後藤氏はチッソが患者補償で生じた多額の債務を抱えることをふまえ、「企業間競争に勝っていく上で、手かせ足かせをできるだけ早く取り除くことが必要」と強調。患者への補償義務が同社の経済活動を束縛する手かせ足かせだとする認識を示したといいます。

 後藤氏は、チッソが子会社JNCに事業を譲渡する分社化前の2010年にも、特措法に基づき分社化ができれば「水俣病の桎梏(しっこく、手かせ足かせの意)から解放される」などとのべた年頭あいさつを社内報に寄せ、批判を浴びていました。

 特措法は、チッソがJNCに譲渡した株式の上場・売却について救済終了を条件としています。

 チッソはJNC株売却で補償責任の消滅を狙っているだけに、患者団体などから怒りの声が上がっています。

加害責任放棄 許さぬ

未認定患者団体「水俣病不知火患者会」 大石利生会長

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(写真)大石利生会長

 加害者のチッソがやるべきことはやったと、自分で判断するような言い方で絶対に許せません。

 水俣病に特有の症状を抱えているのに、救済されていない多くの被害者が今も取り残されています。救済されるべき被害者がいなくなって初めて責任が終わるというのであれば分かります。しかし、救済を求める人がまだ存在する中で、加害者としての責任を放棄するものだと思います。

 未救済の中には、行政認定制度への申請者や裁判原告のほか、水俣病への差別、偏見から手をあげられなかったり、症状があっても水俣病によるものとは気づかなかったりする潜在被害者がいます。

 チッソはJNC株の売却益を行政認定されている患者の補償などに充てるとしていますが、売却後に新たに出てくる被害者はチッソに補償を求めることが一切できなくなることを意味します。

 「慰霊式」後の中川雅治環境相との懇談会で、JNC株の売却を認めるのかとただしました。認定審査や裁判が続いている中で「今はそういう時期ではない」という回答でしたが、国はノーモア・ミナマタ第1次訴訟の和解条項に基づき、全ての被害者を救済するまでチッソの幕引きを許すべきではありません。

今も補償協定 守らず

胎児性患者支援施設「ほっとはうす」 加藤タケ子施設長

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(写真)加藤タケ子施設長

 とんでもない暴言で、しかも犠牲者を追悼する「祈りの言葉」をのべた後に、何を言っているのと怒りがこみ上げます。

 胎児性患者のみなさんは、通常の60代の人とは比べられないぐらい身体機能が悪化しています。以前は自分の足で歩くことができた人も車いす生活になるなど大変な中で、それでも地域で生きたいと一生懸命、生活しているのに水を差すような発言です。

 今ですらチッソは認定患者と結んだ補償協定を守っていません。補償協定には、認定患者の健康状態が悪化し、補償増額が必要な場合、金額の変更を申請できるとなっています。しかし、胎児性患者さんが歩けなくなっても、補償ランクをそのままにしています。

 チッソが譲渡した株式を売却すれば、認定患者の中でもさらに補償に差をつけてくることが考えられます。そうなれば患者どうしや地域にまた亀裂が生まれるのは間違いなく、とても許されることではありません。


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