「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2012年8月28日(火)

橋下氏 「慰安婦」強制否定発言

証言の被害者冒とく 国際的に通用しない

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 「従軍慰安婦強制の事実に確たる証拠はない」「証人が何百人出てきても信用性に足りるかどうかが問題だ」。日本軍「慰安婦」問題で橋下徹大阪市長がタガの外れた発言をして以降、「慰安婦」問題で旧日本軍の強制を否定する暴言が相次いでいます。


 石原慎太郎都知事が「強制ではない」(24日)と暴言を吐いたのに続き、松原仁国家公安委員長は旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を閣僚間で議論すると答弁しました(27日)。いずれも、被害者を含む国際社会の前ではとうてい通用しない暴論です。

 旧日本軍による「慰安婦」問題とは軍がつくった慰安所で女性を拘束し、軍人らの性行為の相手を強いた問題です。女性を人間として扱わず、人権を著しく侵害した犯罪行為として、国連人権委員会や国際労働機関などから日本政府に対し、加害者の訴追、謝罪と補償などを求める勧告が何度も出されています。

政府も認めた

 政府も93年の河野長官談話で慰安所が「当時の軍当局の要請により設営された」ものであり「慰安婦」の生活は「強制的な状況の下での痛ましいものであった」「その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認めています。

 ところが橋下氏は、同談話の発表までに政府が発見した資料の中には「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とした安倍晋三政権時代の答弁書(2007年3月16日)を根拠に「談話の見直しに入るべき」だと主張しています。

 しかし、軍や官憲による直接の強制連行であれ、軍の要請を受けた業者がだまして連れて行ったのであれ、女性たちが軍の「慰安所」に閉じ込められ、一日に何回も兵士たちの相手を強いられたという事実は変わりません。「強制連行」したかどうかだけに問題を矮小(わいしょう)化する橋下氏らの主張は、日本政府の責任を認めない卑劣な議論であり、すでに破綻ずみです。

 しかも、橋下氏があげた07年の答弁書こそ、当時、安倍首相の「慰安婦」問題での強制性を否定する発言に続いて国際社会の怒りの火に油を注いだ答弁書でした。

 当時、強制を否定した安倍首相らの態度に、シーファー駐日米大使は「(米国内に)破滅的影響を及ぼす」と警告。韓国での抗議行動も当然強まり、元「慰安婦」は「私が生きた証人だ」と訴えました。

謝罪求め決議

 07年4月、国際的な批判に追い込まれた安倍首相は訪米先の議会指導部との会談で「元慰安婦の方々に申し訳ない気持ちでいっぱい」と表明せざるをえなくなり、会談したブッシュ大統領は河野長官談話の継承を前提に「首相の謝罪を受け入れる」と述べました。7月には米下院議会が、日本政府に日本軍が女性たちに「性奴隷」化を強制した事実を承認し、謝罪を求める決議を全会一致で採択。その後、オランダやカナダなども続くという事態に発展します。

 安倍首相自身、任期中、「河野談話を継承している」と繰り返さざるをえなかったのであり、問題の答弁書でも談話「継承」の建前は崩していません。

 河野長官談話で強制を認めたのは「強制的な連行があったとする証言集等も存在し、当時の政府で、各種証言集の記述、韓国での聞き取り調査(の結果)を含め総合的に判断した結果」(8月23日、玄葉光一郎外相の答弁)です。軍や官憲が直接かかわった強制連行の証言はその後も相次いでいます。

 橋下氏は軍の要請を受けた業者が女性をだまして連れてきたケースについても、「民間の問題」「風俗業は今でも世界各国に存在する」「軍が関与していたのは衛生管理上の問題からだ」(24日)などと吹聴しています。

 一連の暴言は、暴虐の限りを尽くされた犠牲者たち、今も証言を続けるハルモニへの冒とくにほかなりません。使い古された「靖国」派の妄言以上の証拠を出すべきなのは橋下氏自身です。 (藤原直)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって