2025年8月24日(日)
多子世帯向けの大学無償化
DV被害者ら相次ぎ排除
文科省「扶養確認できれば対象」
![]() (写真)日本学生支援機構市谷事務所=東京都新宿区 |
離婚や配偶者によるDVから逃れたことで一人親となった人たちが、要件を満たしているのに多子世帯向けの修学支援新制度(大学無償化)から排除されるケースが相次いでいます。認定審査を担う日本学生支援機構の誤った運用によって、本来受けられる支援から排除されている世帯が全国で出ていることが明らかになりました。(関連記事)
修学支援新制度は、非課税世帯など低所得世帯を対象に大学などの入学金と授業料を支援するもの。国立大学の場合、支援の上限は入学金28万円、授業料54万円です。3月の法改正によって、2025年度から3人以上の子どもを扶養する多子世帯にも支援対象が広がりました。
西日本在住の関田奈那子さん(仮名)は、夫からの身体への暴力や子どもの前での暴言を受け、23年12月に3人の子どもとともに家から逃れました。行政手続きに夫の協力は得られないので、さまざまな制度を使い24年に子どもの扶養者を奈那子さんに変更。離婚調停中の夫は養育費を払わないため、別居後は奈那子さんの収入だけで育ててきました。
上の子ども2人が大学に通うようになり、学費負担が家計に重くのしかかります。現在は正社員としてフルタイムで働いているものの、一番下の子どもはまだ手がかかる年齢のため「今後どうなるのか」と不安を感じています。
多子世帯向けの修学支援新制度が始まることで一息つけると思った矢先、奈那子さんは大学から支援対象にならないと告げられました。機構に相談すると、支援制度は原則、23年12月31日時点の住民税情報をもとに扶養状況を確認することとされており、24年以降に扶養状況に変更が生じた場合、出産などで扶養する子どもが増えた世帯は支援対象になるが、DV被害などで変更が生じた世帯は対象にならないと説明されました。
しかし、文部科学省は本紙の取材に対し、24年以降に扶養状況に変更が生じた世帯も、聞き取りなどで扶養状況が確認できれば支援対象になると回答。変更事由も子どもの増加に限らず、親の死去や離婚も含まれるとし、DV被害者についても公的機関の証明(自治体のDV保護証明など)によって状況を確認し支援対象とした事例があるといいます。奈那子さんへの機構の説明は、文科省の運用解釈とは大きく異なります。
奈那子さんは「子どもを産み、育ててきたのは間違いなく私なのに、支援対象にならないのは納得がいきません」と語ります。









