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2025年8月24日(日)

多子世帯向け大学無償化

問題続々、相当数の人を排除か

原因調査と検証必要

 4月に始まった多子世帯向けの修学支援新制度(大学無償化)を巡って本紙は、子どもの扶養者となっていた父親が急逝したことで不採用となったケースを既に報じています(7月28日付)。このケースは、年度開始から支援の採用決定までの期間(大学ごとに異なり1~3カ月程度)に扶養状況に変更が生じると、生活は苦しくなるのに支援対象からは外れてしまうという制度の落とし穴によって生じていました。

 この欠陥は現在も是正されていません。

 一方、今回報じた関田奈那子さんのケースは、支援の審査を担う日本学生支援機構が、文部科学省の運用解釈とは異なる運用をしていたことが原因となっています。

 同様の事例は首都圏でも起きています。岡島さくらさん(46)=仮名=は、2023年12月に離婚したものの、元夫がすでに年末調整を終えていたため、3人の子どもの扶養は24年になってから変更しました。今年長女が私立大学に入学したことから、多子世帯の支援を受けられると期待したものの、扶養状況が確認できないとして不採用になりました。

 岡島さんはダブルワークもこなしますが、手取りは月26万~27万円。ほかに高校生と中学生の子どもがおり、余裕はありません。

 実は、関田さんと岡島さんについて機構は、ともに非課税世帯に準じた低所得世帯として、大学の授業料の一部を減免する対象にしています。このことは2人の生計が、夫(元夫)と分離していると機構が認識していることを意味します。つまり機構は、関田さんと岡島さんが、それぞれ3人の子どもの唯一の生計維持者であり、扶養者だと認識していることになります。

 関田さんと岡島さんを子どもの扶養者と事実上認定しながら、多子世帯向けの支援から排除するのはあまりに不合理です。

 同様の事例で相当数の人が、本来受けられる支援から排除されている可能性があります。文科省には、排除されている人の救済に向け、制度の欠陥の是正と、正しい運用解釈の周知徹底が求められます。機構による誤った運用がなぜ行われたのか、どれだけの人が支援から排除されたのか、調査と検証が不可欠です。(佐久間亮)


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