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2022年5月18日(水)

論戦ハイライト

参院内閣委 田村智子議員の質問

国立大学の研究者の非正規雇用化

 日本共産党の田村智子議員は17日の参院内閣委員会で、日本の研究力低迷の背景に国立大学の研究者の非正規雇用化の影響があることを告発し、正規雇用の研究者の増員をはかるよう迫りました。

担当相「若手の任期なしポスト充実必要」

田村氏「正規の増員なしに不可能」

写真

(写真)質問する田村智子議員=17日、参院内閣委

 田村氏は、2000年以降の日本の論文数の減少傾向の一番の要因は、国立大学での論文数の落ち込みだと指摘。国立大学では01年から21年に非正規雇用の研究者が1666人から2万4501人に増加し、正規雇用が2万人近く減っていることを告発しました。

 田村 国立大学で研究者の非正規雇用化が劇的に進んだことが、論文数の推移に影響を与えたのではないか。

 小林鷹之内閣府特命担当相 国立大学の研究者数が論文数の増減にどのような影響を与えるか詳細な分析はされていない。

 田村 2万人規模での非正規雇用化が何をもたらしているか。根本的な要因分析が必要だ。

 「若手研究者への任期なしポストの充実も必要」などと述べる小林担当相に対し、田村氏は、正規研究者の増員という方策なしには不可能だと指摘。5年間の審査期間を経て安定したポストを得るテニュアトラック制度や、期限を区切ったプロジェクトの寄せ集めの「研究大学総合振興パッケージ」では、若手の無期雇用研究者が増えない実態を示して批判しました。

 研究大学総合振興パッケージに含まれる世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)では、プロジェクト終了とともに研究者の雇用が問題になり、支援の打ち切りに伴う乱暴な雇い止めが起きています。田村氏は「これでは、約2万人規模で増えた非正規雇用の研究者を正規雇用にすることはできない」と迫りました。

田村氏「研究開発に深刻な打撃」

担当相「労働契約法の趣旨で運用重要」

田村氏「大切な答弁だ」

非正規雇用の研究者のうち、2023年3月31日までに雇い止めの恐れがある国立大学ごとの研究者数
東京大学 588
東北大学 275
京都大学 257
三重大学 249
名古屋大学 206
浜松医科大学 160
大阪大学 126
新潟大学 122
滋賀医科大学 99
信州大学 98
千葉大学 94
九州大学 87
北海道大学 72
文部科学省が田村智子議員事務所に提出した資料から作成

 正規雇用の増員の政策がないもとで、国立大学では常勤の非正規雇用の研究者が雇い止めされようとしています。

 田村氏は、国立大学の非正規職員のうち、23年3月31日で契約期間が10年となる研究者数をただしました。文科省の柿田恭良大臣官房総括審議官は3099人と答弁しました。

 田村氏は、東大588人、東北大275人、名古屋大206人、大阪大126人など内訳を示し、無期転換逃れのための大量の雇い止めの恐れがあると告発。国立研究機関でも1390人が同様の雇い止めの対象になりうるとして、国立機関であわせて4500人が雇い止めになりかねないと訴えました。

 田村 研究の蓄積が白紙に戻れば、社会的な損失だ。日本の研究開発に深刻な打撃を長期にわたって与えることになる。

 小林担当相 日本の研究力向上のためには、研究者が腰を据えて研究に打ちこむ環境を整えることが重要。その観点から雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることが重要。各法人を所管する省庁で適切に対応いただく。

 田村 大切な答弁だ。

 田村氏は、全国立大学の雇い止めについて文科省に調査要求した回答の一覧を紹介。1人の職員の契約更新に全学レベルの合意が必要というケースが多いなど非常にハードルが高く、大学当局がはねのけている例もあると指摘しました。

 九州大学では、技術支援者の契約更新を大学が拒否し、上司が大学からの指示文書を読み上げて契約更新がないことを伝えたという告発があったと紹介。「今年度で確実に雇い止めするための手順書や指示書の存在が疑われる。労働契約法の趣旨に真っ向から反するものだ。調査すべきでないか」と追及しました。

 しかし、文科省の高橋はるみ大臣政務官は「各大学に無期転換ルールの適切な運用を周知する」と言うだけ。田村氏は「周知徹底だけでは違法・脱法行為を許すことになってしまう。適切に指導として行われることを求める」と迫りました。


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