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2022年5月6日(金)

主張

円安と金融政策

日銀は物価安定の使命果たせ

 急激な円安が止まりません。連休前には20年ぶりに一時131円台に下落しました。直接のきっかけは黒田東彦日本銀行総裁の円安容認発言でした。3月以降の円安は輸入物価を押し上げ、中小企業や生活困窮者にとりわけ大きな被害をもたらしています。物価の安定は日銀法に定められた日銀の使命です。物価高をこれ以上放置することは許されません。日銀も岸田文雄政権も、円安を加速している金融緩和政策(異次元緩和)を抜本的に見直すべきです。

国民苦しめる異次元緩和

 黒田総裁は4月28日の記者会見で「エネルギー価格の物価押し上げ寄与は先行き薄れていく」として「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく」と語りました。東京外国為替市場の円相場が1ドル=131円台になったのはこの発言の直後です。

 中央銀行総裁が円安に何も手を打たないことを公言したことでさらに円相場が下がってしまいました。食費や光熱費の負担増による国民の苦しみをまったく理解しない姿勢です。

 日本商工会議所が4月に行った調査では、円安は「デメリットの方が大きい」と答えた中小企業は53・3%に上りました。影響(複数回答)については「原材料などの仕入れ価格上昇」が80・7%、「燃料、エネルギー価格の上昇」が73・6%と圧倒的多数を占めました。「仕入れコストの上昇分を販売価格に転嫁できず収益悪化」は48・5%とほぼ半数です。

 全国銀行協会の高島誠会長も4月の記者会見で、円安の進行に伴う輸入物価の上昇が中小企業や消費者にとってデメリットが大きいと指摘し、日銀に金融緩和政策の検証を求めました。

 日銀の異次元緩和は2013年4月、「2年間で2%の物価上昇実現」を目標に開始されました。金融市場で大量の国債を購入し、巨額のお金を供給することで景気を回復させ、賃金の上昇で「経済の好循環」を実現するという政策でした。当時、安倍晋三首相が「アベノミクス」の「第1の柱」に位置づけました。

 金融緩和によって円安が進み、海外投資家の日本株買いが増えて株価は2倍に上昇しました。大企業と富裕層が空前の利益を得る一方、労働者の実質賃金は低下し、格差が広がりました。9年たっても好循環など実現していません。

 国の借金である国債を大量に日銀が保有することは「財政ファイナンス」(財政赤字の穴埋め)として当初から批判されてきました。日銀が抱える国債は全発行残高のほぼ半分を占める異常さです。破綻は明白です。

政府も見直しに責任を

 今の物価高には、コロナ危機で停止していた経済活動の再開による需要増、ロシアのウクライナ侵略と経済制裁に伴う原油価格の上昇、急激な円安といった複合的な要因があります。円安をもたらしている異次元緩和の見直しは日銀と政府が行うべきことです。

 日銀は政府から独立した中央銀行であるとはいえ、異次元緩和は安倍元首相が日銀に共同声明を強い、抵抗を示した白川方明総裁を任期満了前の退任に追い込んで実行させた政策です。政府の責任は重大です。何の反省もなく続けることは、国民をさらなる苦境に陥れることにしかなりません。


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