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2022年4月23日(土)

主張

学術会議への攻撃

科学技術の軍事化こそやめよ

 岸田文雄首相が日本学術会議会員6人の任命拒否を続ける一方で、自民党による学術会議攻撃が行われています。

 政府の国家安全保障戦略改定に向けて議論している自民党安全保障調査会で、「学術会議の『呪縛』を打破しないことには省庁間の壁も破れない。産学官一体と言っても、防衛省・自衛隊は混ぜてもらえていない」との発言があったことを本紙(17日付)が報じました。軍事研究を認めない日本学術会議を敵視する姿勢があらわです。

ウクライナ侵略に乗じて

 河野太郎元防衛相は、17日放映の民放番組で学術会議の軍事研究拒否をやり玉にあげ、文部科学省所管の科学研究費を防衛省の共同管理にすれば拒否できないと主張しました。毎年8万件余が採択される科学研究費を防衛省が介入する制度に変質させる企てです。

 自公政権は2015年、防衛省の資金で大学や企業の研究者に軍事研究を委託する安全保障技術研究推進制度を創設しました(22年度予算101億円)。「戦争する国」づくりに向けて軍学共同を本格化する目的です。参院で審議中の経済安全保障推進法案は、政府が国家と国民の安全に関わる特定重要技術を指定し、その研究に参加する研究者に守秘義務を課し、防衛省が軍事技術に活用できる仕組みを盛り込んでいます。

 岸田政権と自民党は、ロシアのウクライナ侵略に乗じ「日米同盟の強化」「敵基地攻撃能力の保有」を叫び、そのための科学技術の軍事化―軍学共同を強めようとしています。学術会議の「呪縛」打破という発言は、岸田政権の本音をあからさまに示したものです。

 学術会議は、戦前の科学者が戦争に協力させられた歴史への痛苦の反省から出発し、1950年と67年に「軍事目的の研究を行わない声明」を採択しました。2017年に採択した声明でも、二つの声明を継承しました。軍事研究について「研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる」として強い懸念を示しています。これらの声明が、多くの大学や研究機関が軍事研究に参加することへの歯止めになっています。

 政府・自民党は「戦争する国」づくりと一体に学術会議への攻撃を強め、この歯止めをなくそうとしてきました。最大の暴挙が、20年10月1日に明らかになった菅義偉政権による任命拒否です。学術会議が法にのっとって推薦した新会員105人のうち6人の任命を何ら理由を示さず拒否しました。

 その狙いが学術会議を政府に従順な機関に変質させることにあるのは明らかです。学問の自由と学術会議の独立性を守れという広範な批判が学術界から起こりました。学術会議は6人の任命を政府に粘り強く求め、18日の総会でも改めて確認されました。

任命拒否の撤回を

 岸田首相は「任命手続きは終了した」として、この暴挙を撤回していません。それどころか問題をすり替えて「学術会議の在り方の見直し」を検討しています。小林鷹之科学技術担当相は、夏頃までに方針を示すとのべています。

 政府・自民党は、学術会議への攻撃や科学技術の軍事化の推進をやめるべきです。岸田首相が6人を直ちに任命することを強く求めます。


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