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2022年4月22日(金)

主張

反戦デモ敵視

国民監視・抑圧の動きを許すな

 陸上自衛隊が「反戦デモ」や「報道」を「テロ」などと並んで「敵」とみなす資料を作成していたことが問題になっています。反戦デモや報道の敵視は、憲法で保障された表現の自由を脅かし、自衛隊による国民監視、言論や市民運動の抑圧にもつながります。徹底究明が必要です。

資料を修正せず保存

 反戦デモや報道を敵視する陸自作成の資料(「陸上自衛隊の今後の取組み」)は、日本共産党の穀田恵二衆院議員が3月に国会で取り上げ、連続的に追及してきました。

 資料の使用が初めて確認できるのは、2020年1月に当時の陸自トップだった湯浅悟郎陸上幕僚長が都内で行った講演です。

 資料は、「予想される新たな戦いの様相」として「武力攻撃に至らない様々な手段により、自らの主張を受け入れるよう相手に強要」する「グレーゾーンの事態」を指摘し、具体例に「テロ」や「サイバー攻撃」などとともに「反戦デモ」や「報道」を挙げていました。

 その上で、「グレーゾーンの事態における対応」として「敵企図の解明と対処方針の確立」が必要とし、反戦デモや報道を文字通り「敵」扱いしていました。

 しかも、この時の湯浅氏の講演原稿には、「グレーゾーンの事態」では「報道、テロ、反戦デモ、サイバー攻撃、不法行動、特殊部隊等による破壊活動等により、自らの主張を受け入れ(るよう)相手に強要し、我が国の主権、領土、国民に対する現状変更を試みると予測されます」「敵の現状変更の試みに係る兆候を早期に察知するため、平素からの警戒監視、情報収集態勢を強化します」と書かれていました。

 湯浅氏は19年10月の講演でも「グレーゾーン事態」に「報道戦、テロ行為、扇動による反戦デモ」などがあり、「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」と語っていたことが、本紙の調べで分かっています。

 20年2月に陸自は記者向けの勉強会で、湯浅氏が1月の講演で使用したものを基に作成した資料を配布します。記者から「グレーゾーンの事態」の例に「反戦デモ」を挙げているのは不適切ではないかとの指摘を受け、資料を回収し、翌日に「暴徒化したデモ」と修正した上で再配布しました。

 しかし、防衛省は、穀田氏の質問に、湯浅氏の講演資料はその後も修正されないまま保存され、陸自内で「広く共有されていた可能性がある」ことを認めました。実際、記者勉強会後も、陸自幹部が「反戦デモ」と記した資料を使って講演した事例があることが本紙日曜版の調べで判明しています。

海外派兵態勢と一体

 防衛省は、穀田氏が記者勉強会で配布した修正前の資料の提出を求めた際、「誤廃棄」したために存在しないとしてきました。その基になった湯浅氏の講演資料については、その後に穀田氏が存在を指摘するまで隠していました。

 同省は今月になって、「反戦デモ」と記した資料を使用しないよう陸自内に周知したとしています。しかし、デモや報道を監視し、対処すべき対象とする姿勢は変わっていません。安保法制をはじめ、「敵基地攻撃能力」の保有や改憲の企てなど「海外で戦争する国づくり」の下で進む国民監視・抑圧の動きを許してはなりません。


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