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2022年4月20日(水)

主張

「原発活用」方針

安全置き去り 前のめり許すな

 岸田文雄首相がエネルギーの安定的な確保をめぐって原発を活用するとの発言を繰り返しています。自民党内の議員連盟や日本維新の会は停止中の原発の速やかな再稼働に向けた審査の効率化などを政府に要求しています。2011年3月の東京電力福島第1原発事故は甚大な被害を招き、いまも多くの福島県民が元の暮らしを取り戻せていません。原発再稼働への前のめりは、重大事故を引き起こした痛苦の教訓を踏まえない、安全置き去りの姿勢です。原発に頼らずに電力・エネルギーを確保する政策への転換を急ぐべきです。

緊急の再稼働を迫る動き

 岸田首相が8日の記者会見などで表明した原発活用論は、ロシアのウクライナ侵略への制裁としてロシア産石炭を輸入禁止にするのに伴う電力供給ひっ迫を回避することを理由にしています。

 もともと岸田政権は昨年10月に決定した第6次エネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、「必要な規模を持続的に活用」する立場です。

 同計画では30年度の電源構成に占める原発を20~22%にするとしています。現在の4%程度を大幅に引き上げるものですが、世論の批判を前に、政府の思惑通りには再稼働は進みません。首相の活用発言には、対ロ制裁をめぐるエネルギー問題を契機に再稼働を加速させたい狙いが透けてみえます。

 自民党の「電力安定供給推進議員連盟」は3月15日、原発の「緊急的稼働」を求める緊急決議を萩生田光一経済産業相に提出しました。日本維新の会も同日、「運転計画の前倒しが可能な原発」は緊急の特別措置として再稼働させることなどを提言しました。

 自民議連の決議では、「速やかな稼働を達成するためのあらゆる措置」を講じるように要請し、原子力規制委員会には「稼働に係る規制上の制約を一時的に除外する」ことまで求めました。

 除外対象には、テロ対策の「特定重大事故等対処施設」の審査も含まれています。同施設は東電福島第1原発事故後につくられた新規制基準で設置が義務付けられました。この要求に規制委の更田(ふけた)豊志委員長が「議論に応じる用意がある」と述べたことは重大です。規制委が推進側に加担することは許されません。

 そもそも電力の安定供給の点で、原発や巨大石炭火力のような「一極集中型」に頼ることは危険です。3月中旬に東京電力・東北電力の管内で初の「電力需給ひっ迫警報」が発令されたのは、同月16日の福島沖地震で福島県などに集中立地する石炭火力が停止したことが主な要因でした。この教訓に学ぶなら小規模分散型の電源への転換が急務です。「地域分散・地産地消」の再エネの普及によって安定した電力を確保する道を本格的に追求することが重要です。

省エネ・再エネ推進こそ

 原油価格高騰をはじめ現在のエネルギーをめぐる事態は、海外依存からの脱却の必要性を改めて浮き彫りにしています。日本における再エネには大きな潜在力があります。再エネで発電した電力を最大限活用できる送電網などの整備をすすめるなど、政府は普及に力を注ぐべきです。原発固執から脱却し、省エネ・再エネ拡大によるエネルギーの自給に足を踏み出す政治を実現する時です。


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