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2022年4月18日(月)

主張

盛り土の規制

被害防ぐ実効性ある法整備を

 静岡県熱海市で20人以上の人命を奪った昨年7月の大規模な土石流被害は、不適正な盛り土の崩落がもたらした人災でした。危険な盛り土は全国各地に存在しているにもかかわらず、規制する全国一律の仕組みがないため、法整備を求める声が相次いでいました。世論の広がりで、政府は盛り土規制の法案を国会に提出しました。国民の命と財産を守るため、実効性ある法律の制定が不可欠です。

建設残土の対策と一体で

 危険な盛り土をめぐっては、大雨や地震の際に崩れる事故が後を絶ちません。少なくない地方自治体は規制の条例をつくりましたが、権限や罰則が弱く自治体任せでは限界があります。条例のない自治体に土砂が持ち込まれ危険な盛り土がつくられるケースも問題になり、全国知事会などは全国一律で規制できる法整備を要望してきました。これまで立法化を避けてきた歴代政府の責任が問われています。

 熱海市の土石流被害を受け、政府は盛り土の総点検(対象=約3・6万カ所)を実施しました。3月28日に公表したまとめでは、1089カ所で法令手続きの違反などがありました。うち516カ所では必要な災害防止措置が確認できず、142カ所では廃棄物の投棄などが確認されるなどしました。放置できない深刻な事態です。被害を起こさない緊急の対策を講じるとともに、周辺住民に危険性を知らせる必要な情報公開など政府がイニシアチブをとらなくてはなりません。

 政府提出の規制法案(宅地造成等規制法改正案)は、「危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制」するとしています。管理責任を明確にし、罰則も強化しました。都道府県が規制区域を指定し、同区域内で行う盛り土などは知事の許可が必要としました。しかし、規制区域を「人家等に被害を及ぼしうる区域」と限定したため、区域外は規制の及ばない“白地区域”となってしまいます。土砂災害警戒区域等の災害危険区域は禁止区域にするなど、“白地区域”でも規制の対象になるよう盛り土行為は届け出制として、大きな規模の盛り土は許可制にすべきです。

 危険な盛り土がつくられる要因に、建設工事で発生する建設残土の不適正な処理があります。総務省の建設残土についての実態調査(昨年12月公表)では、12都道府県の20市町村が不適正事案を認識していることが明らかになりました。建設残土を発生させる側が最終処分まで責任を持ち、受け入れ地、最終処分先の確保を義務付ける指定処分制度やトレーサビリティー制度を法制化すべきです。確保できるまで、トンネルなどの掘削工事に着手しないことも必要です。

人災を繰り返さぬために

 国会では、こうした内容の修正案を日本共産党、立憲民主党、れいわ新選組、有志の会が共同提出し、熱海市で起きたような土石流被害を二度と繰り返さないための議論を続けています。

 危険な盛り土の被害を招かないために、抜け穴のない具体策が不可欠です。リニア中央新幹線工事は大量の残土が排出されるにもかかわらず、最終処分先を確定せずに工事を始め、災害危険区域内の仮置き場に堆積させるなど問題だらけです。工事そのものを根本から見直すべきです。


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