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2022年4月9日(土)

主張

経済安保法案

軍事と一体化図る危険明らか

 経済安全保障法案が7日、衆院を通過しました。経済や科学技術を軍事に組み込む危険な中身が審議を通じて明らかになりました。「経済安全保障」と銘打ったものの、何から何を守るのかという肝心なことについて岸田文雄政権は具体的に説明しませんでした。ほとんどが政府の一存で決められ、実際の運用は政府に白紙委任されています。

軍民両用技術の開発推進

 「特定重要物資」の安定供給を図るといいますが、何が特定重要物資かは示されていません。国民の生存に欠かせない食料、エネルギーの自給について法案は触れていません。「外部から行われる国家・国民の安全を害する行為」を防ぐとしていますが、何がそれにあたるかも明示されません。施行後、政省令で定められる事項は138カ所に上ります。

 はっきりしたことの一つは科学技術の軍事研究推進です。政府が「特定重要技術」を指定し、「指定基金」から資金を提供して軍事転用可能な技術を開発します。開発にかかわって機微な情報を扱う人には罰則付きで守秘義務を課します。

 特許出願の非公開制度も導入されます。政府が軍事技術を非公開の秘密特許に指定することが可能です。公開を原則とする現行の特許制度を大きく改変し、戦前の秘密特許制度を復活させることになります。

 機微情報や秘密情報を扱う人の「適性」を評価する制度の導入を今後検討することも小林鷹之経済安保担当相が明言しました。対象者は家族、交友関係、生活習慣まで調べられます。秘密保護法制の拡大につながります。審議の中で参考人から、研究者の人権に大きな影響を与えるとして反対する声が上がりました。

 政府が企業への介入を強化することも大きな問題です。「基幹インフラ」を担う企業は、設備導入などの際、納品業者、委託業者などを事前に報告させられます。政府はそれを審査し、勧告、命令まで行うことができます。どこまで詳細な報告を求めるかは政府の裁量です。企業秘密であるサプライチェーン(供給網)を政府に報告させられることに経済界からも懸念が出ています。

 統制強化の一方、「安定供給の確保支援」の名目で大企業を資金援助します。すでに大企業が経済安全保障に対応する部署を設けたり、経済産業省OBの天下りを受け入れたりしています。特定企業への巨額の公費投入が横行し新たな政治・官僚・業界の癒着を生むことになりかねません。

参院で徹底審議し廃案に

 米国と中国の覇権争いを受けて日本の経済政策を日米安保体制にさらに深く組み込む狙いも浮き彫りになりました。

 1月の日米首脳会談は経済安保での緊密な連携を確認し、閣僚レベルの日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)の立ち上げに合意しました。小林担当相はこの合意と法案に直接の関係はないとしつつも、経済安保に関して日米で連携していくことを認めました。法案で経済安保の司令塔と位置づけられているのは国家安全保障局です。

 参院で法案の問題点をさらにただし、廃案に追い込まなければなりません。


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