しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年3月7日(月)

主張

気候変動の報告書

リスク下げる真剣な努力を今

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第2作業部会が、第6次となる新たな報告書を公表しました。人間の活動が引き起こす気候変動がすでに広範囲な悪影響と損失、損害を与えていると指摘し、このままでは温暖化の進行が、対応を困難にする「適応の限界」に達することを警告しています。気候危機を打開するための取り組みを抜本的に強めなければならないのは明白です。

強い表現で警鐘ならす

 IPCCは、気候変動について世界の科学的知見をふまえて評価し、5~6年ごとに報告する国連の組織です。三つの作業部会があり、それぞれ報告書をまとめて公表しています。2021年8月に公表された第1作業部会(第6次)の「自然科学的根拠」についての報告書は、猛暑や洪水などの気象の極端現象を引き起こす温暖化の要因は「人間活動によることは疑う余地がない」としました。

 今回の第2作業部会の報告書は、「影響と適応」についての評価です。「人為起源の気候変動は、極端現象の頻度と強度の増加を伴い、自然と人間に広範囲にわたる悪影響と、それに関連した損失と損害を、自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている」と従来の報告書より強い表現で断定しました。

 現状で33億~36億人が気候変動に対して脆弱(ぜいじゃく)性があり、水害や水不足などの被害を非常に受けやすい状況にあるとしています。

 今後数十年間とそれ以降に、一時的にでも産業革命時から世界の平均気温上昇が1・5度を超えた場合、その規模などに応じてさらなる温室効果ガスの排出を引き起こすことがあり、環境悪化の一部は温暖化が低減しても不可逆的になるとしています。1・5度付近に抑えたとしても、気候変動に関連する損害等は大幅に低くなるが、すべてをなくすことはできないとも見通します。

 次の10年間の社会がとる選択によって、被害を受けた人間や自然のシステムが回復可能となるかが決まります。温室効果ガス排出量が急速に削減できず、特に短期に1・5度を超えた場合には、回復可能となる「見込みがますます限定的となる」と警鐘を鳴らしています。

 世界の平均気温は、すでに1・1度上昇しています。21年11月に英国グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、1・5度の上昇に抑えることを各国が合意しました。しかし、各国が国連に提出している二酸化炭素(CO2)削減目標では、1・5度以下は達成できません。主要国を先頭にした削減量の積み上げが必要です。グラスゴー合意は、目標の再検討と強化を各国に要請しています。22年11月にエジプトで開かれるCOP27にむけて目標を見直すことは各国政府に課せられた責任です。

岸田政権は責任果たせ

 山口壮環境相は、IPCC第2作業部会の報告書公表を受けて、「地球温暖化が進行すると、多くの自然・社会システムが『適応の限界』に達する」として、「気温上昇を1・5度に抑える」ことが重要とのべました。

 そうであれば、大量のCO2を排出する石炭火力発電の温存をやめるとともに、30年までの日本のCO2削減目標を世界水準の50~60%までに引き上げるべきです。


pageup