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2022年2月19日(土)

被災者に寄り添い中長期的支援を

志位委員長と岩手県知事・陸前高田市長との会談

 東日本大震災から11年を控え、日本共産党の志位和夫委員長は18日、岩手県の達増拓也知事、同県陸前高田市の戸羽太市長とオンラインで会談し、復興の現状や課題、要望について聞きました。


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(写真)オンラインで志位委員長と意見交換をする達増知事(右端)=18日、岩手県庁

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(写真)オンラインで志位委員長と会談をする戸羽市長(正面)=18日、岩手県陸前高田市

 志位氏は、「知事は、『被災者の幸福追求権を保障する』という憲法13条の立場で被災者の苦しみに心を寄せる対応をしてこられた」と敬意を表明。被災者の医療費・介護保険利用料の免除を昨年12月末まで続けたのは「金字塔と言うべき仕事です。これを国の制度とする方向で生かしたい」と述べました。

心のケア、中長期で

 達増氏は、震災から11年が経過するも、被災者の心身の健康を守る「県こころのケアセンター」への相談件数がいまだに多いと指摘。「専門家は『心のケアを縮小すべきエビデンス(証拠)はない』と言います。時間で区切る課題ではなく現場の実態に合わせたケアが必要です」と要望しました。

 志位氏が、心のケアの予算を削っている県もあるとして、岩手県の現状を質問すると、達増氏は、「心のケアはやらないといけないので、人員や予算を減らすことは考えていない」と述べ、スタッフ約50人を確保するなど十分な相談体制を維持していると説明しました。

 志位氏は、被災者に寄り添って心のケアに取り組む県の姿勢に敬意を表したうえで、「期限を設けず、解決するまで中長期的に国が支援するよう求めていきます」と応じました。

 日本共産党の岩渕友参院議員も「被災者に寄り添った支援を心強く思う。岩手県の取り組みは他の災害でも参考になる」と述べました。

水産業の苦境の打開を

 「主要魚種の水揚げ量の激減や、新型コロナウイルスの流行による消費の落ち込みが復興に大きな影を落としている」と地域経済の苦境を訴える達増氏。志位氏が国として実施すべき漁業支援について尋ねると達増氏は、東北は養殖に適した環境だとして、「魚種の転換への支援とともに、育てる漁業が軌道に乗れば収入が安定する。育てる漁業へのシフトに国も主導的に取り組んでほしい」と指摘。志位氏は、「最新の科学的な知見を集めて水産業の苦境を打開するとりくみを求めていきたい。養殖事業に十分な予算をつけるよう国に提起していきます」と強調しました。

市民と野党の共闘発展

 最後に「岩手県は、市民と野党の共闘の発祥の地の一つであり、知事と一貫して肩を組んでやってこられてうれしく思います。今度の参院選でも共闘を発展させるために力を合わせていきたい」と志位氏。達増氏は、2015年の岩手県知事選の支援で盛岡市に集まった志位氏も含む野党5党首のサインを「宝物にしている」と述べ、「この枠組みを大事にしたい」と応じました。

汚染水海洋放出許さぬ

 養殖業をはじめとする水産業が主要産業である陸前高田市。戸羽市長は、最大の問題として、高濃度の放射性物質トリチウムを含むアルプス処理水(汚染水)の海洋放出を挙げました。

 戸羽市長への政府の回答によると、海洋放出についての説明会を全国で500カ所行ってきたものの、岩手県で実施したのは2カ所のみです。市長は「福島をメインでやっていると思うが、岩手県の漁業者も同じ被害を受けている。まずは説明して、漁業者も含めて解決するべきです」と語気を強め、住民にまともに説明しない政府の姿勢を批判しました。

 また市長は、文部科学省が全国の小中学校や高校に配布している「放射線副読本」に政府が作成した汚染水を「安全処分する」などと書かれたチラシが入っていた問題に言及。県内被災自治体でつくる「岩手三陸連携会議」では配布の中止で一致したと紹介しました。

 志位氏は、「沿岸地域全体の問題であるのに、まともな説明がないのは議論以前の問題です。政府の姿勢をただしていきます」と強調。さらにトリチウムの分離は理論的に可能だとして、「海洋放出に代わる新たな処理・保管方法を、国が科学的な英知を結集して取り組む姿勢が重要です」として、海洋放出は認めないという立場で頑張ると表明しました。

第1次産業の復興を

 「三陸沿岸では漁業が苦戦すると観光も全部だめになる。第1次産業を立て直すことが、われわれの生命線です」と訴える戸羽市長。以前から課題となっている貝毒の発生も原因が特定できないため進展がないとして、「国も本腰を入れて対応してほしい」と要望。さらに「人口減少も課題です。陸前高田市も国勢調査では2万3000人でしたが、1万8000人を割る状況となり、このままでは日本がなくなります。30年後の日本をどうするのかという国のビジョンがなく、未来に向けた方向づけがほしい」と切実に語りました。

 志位氏は、「日本はヨーロッパと比べて農業に対する補助があまりに少ない。価格保障や所得補償を抜本的に充実させて、食料自給率37%という状況を大転換しなければなりません。市長の話を受け止めて、私たちもさらに力を入れたい」と応じました。

予算増・復興庁見直し

 また志位氏は、復興庁関連予算が大震災から10年目の1兆4024億円から直近では5790億円へと減少し、被災者支援交付金が減らされている問題があると指摘。戸羽市長は、復興庁職員が自治体とともに課題を解決する必要があるとして、復興庁の役割を抜本的に見直すよう提案しました。志位氏も、「岸田文雄首相は『聞く耳を持っている』と言っています。当然の道理ある方向なので、復興予算の増額と復興庁のあり方の見直しを一体に求めていきたい」と語りました。


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