しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年1月26日(水)

主張

ITとデータ利用

個人情報守る実効ある規制を

 インターネットの利用にあたってウェブサイトの閲覧履歴を勝手に外部提供されないなど、個人の権利を守るルールの確立が不可欠です。総務省は通常国会に電子通信事業法改定案を提出する方針ですが、IT(情報技術)大企業の圧力を受けて規制が後退しそうです。岸田文雄政権は「官民のデジタル化」を重点政策に掲げ、データの利活用を進めています。その一方で個人情報保護に逆行することは許されません。

本人の同意を義務づけよ

 インターネットで情報を検索すると、その事柄に関する広告が表示されるようになります。閲覧履歴が検索サイトから広告会社に提供されているからです。「ターゲティング広告」と呼ばれます。

 閲覧履歴を外部の第三者に提供する際、拒否を含めて本人の意思表示を明確に保障するルールが定まっていないことが問題になっています。総務省が設けた電気通信事業ガバナンス検討会が昨年からIT事業者に対する規制のあり方を検討してきました。

 当初、ネット利用者本人から外部提供に同意を取り付けることを事業者の義務とすることが議論されていました。しかし14日まとまった報告書案は本人への通知、公表だけで可能とし、同意の取得を事業者に義務づけませんでした。

 無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が中国の同社関連会社から閲覧可能になっていたことが昨年発覚し、データ保管に関する管理規則の厳格化が求められていました。しかし利用者情報を保管するサーバーを外国に設置する際や、外国業者に業務を委託する場合の国名の公表義務について報告書案はあいまいです。

 検討会の議論に対して、IT企業が多く加入する新経済連盟(代表理事=三木谷浩史・楽天グループ社長)は「過剰規制」「ビジネスに新たな負担」とする見解を発表し、規制の強化に反対しました。経団連も、電気通信事業法に個人情報保護の規律を新たに設けるべきでないと表明しました。

 報告書案への意見公募を経たうえで改定法案が作成されます。識者や消費者団体から、法案の規制が骨抜きとなることに批判や懸念の声が上がり、新たな規律を国に要求する意見が出されています。

 個人情報保護法に加えてIT大企業の個人データ利用を法律で規制することは決して過剰なことではありません。

 欧州連合(EU)は「一般データ保護規則」で厳格な個人情報保護法制を定めています。その上でIT大企業を規制対象とする「デジタルサービス法」を制定しようとしています。ターゲティング広告に個人データを利用する場合、利用方法の明示や、利用者本人がいつでも拒否したり利用方法の修正を求めたりすることを保障するよう事業者に義務づけます。立法機関の欧州議会で20日可決され、今後、加盟国の協議を経て成立が図られます。

自己情報の権利保障こそ

 個人データをもっぱら企業の金もうけの対象として利活用したのでは人権が守られません。自分のどんな情報が集められているかを本人が知り、不当に使われないよう関与する権利を保障することは国の責務です。政府はIT大企業に対する実効ある規制を制定すべきです。


pageup