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2021年12月27日(月)

主張

思いやり予算合意

対米従属の「強靱化」許せない

 日米両政府は2022~26年度の5年間の米軍「思いやり予算」(在日米軍駐留経費の日本側負担)の内容について合意しました。従来の基地の施設整備費を増やすのに加え、「訓練資機材調達費」を新設します。日本政府は、今回の合意に基づく負担を「日米同盟を一層強化する基盤を構築する」とし、通称を「同盟強靱(きょうじん)化予算」にするとしています。しかし、日米地位協定上、米側が負担すべき経費を日本側が肩代わりするという「思いやり予算」の本質は変わりません。対米従属をさらに「強靱化」する重大な合意です。

米から一層の増額要求も

 日米両政府が21日に結んだ合意では、5年間の負担総額を1兆551億円、年平均で約2110億円としました。これを受けて岸田文雄政権が24日に決定した22年度当初予算案には、「思いやり予算」として21年度比39億円増の2056億円を計上しました。

 このうち、新たな負担となる「訓練資機材調達費」は10億円を盛り込みました。政府は「在日米軍の訓練のみならず、自衛隊と米軍との相互運用性を高める共同訓練にも資するような資機材を調達する」(林芳正外相)としています。具体的には、戦闘訓練のための最新鋭シミュレーターの導入費などとされます。しかし、「所有権は米軍側にあり、自衛隊が使える頻度などは未知数」(「東京」22日付)と指摘されています。

 従来の負担である日本人従業員の労務費や基地で使う光熱水費には一定の限度があります。これに対し、「訓練資機材調達費」は際限がありません。今回の合意では5年間で総額200億円とされていますが、今後、米側から増額を要求される恐れがあります。

 22年度予算案の基地の施設整備費は、21年度比50億円増の267億円となりました。合意では5年間で総額1641億円とされます。「在日米軍の即応性向上、施設・区域の抗たん性強化に資する施設整備を重点的に推進していく」(林外相)とし、米軍機の掩体(えんたい=シェルター)などを整備します。

 「抗たん性強化」とは、敵の攻撃に耐えて基地の機能を維持する能力を高めることです。「台湾海峡などの有事の際には、前線となる在日米軍基地は急襲を受けるリスクがある」(「毎日」22日付)ためと指摘されています。在日米軍基地への攻撃を現実的な危険として想定したものです。

 22年度予算案の「思いやり予算」はこのほか、労務費1533億円、光熱水費234億円、硫黄島への米空母艦載機の着陸訓練移転費11億円となっています。合意では、アラスカへの米軍機の訓練移転費にも負担対象を広げます。

肩を並べて戦争するため

 岸信夫防衛相は今回の合意について、中国や北朝鮮の軍事力強化を挙げ、「厳しい安全保障環境に(日米が)肩を並べて立ち向かっていく決意を示すことができた」と述べています。まさに自衛隊と米軍が「肩を並べて」戦争するための態勢づくりの一環です。

 米国の同盟国の中でも異常突出している「思いやり予算」を増やす道理はどこにもありません。岸田政権は、合意に基づく特別協定を来年早々に締結し、承認案を通常国会に提出しようとしています。その成立を許さない運動と世論を広げることが必要です。


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