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2021年12月23日(木)

「湾岸」利用し増額圧力

米軍「思いやり」・特別協定

外交文書

 米軍思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)をめぐり、1990年9月29日の日米の首脳会談や外相会談で、米側が湾岸危機を利用して増額や特別協定の前倒し延長を要求していたことが、22日に公開された外交文書に明記されていました。

 ブッシュ米大統領は海部俊樹首相との会談で、「湾岸危機とも直接ではないが関連する案件としてHNS(米軍駐留経費負担)がある」と切り出し、「91年にHNSの一層の増額を実現できれば米議会に対する良い印になる」と要求しました。

 海部氏は「最善の努力を払う」と約束。日本は最終的に、光熱費負担を新たに受け入れた特別協定の締結に応じました。

 日米両政府は87年から駐留経費に関する特別協定を結び、92年3月までの期限付きで従業員手当を負担していました。もともと、思いやり予算は日米地位協定上も支払い義務がなく、特別協定についても「特例・暫定的な一時的措置」だと説明していました。

 しかし、首脳会談に先立つ外相会談では、ベーカー米国務長官が「91年度におけるHNSの新規増がほとんどないと聞いているが、政治的にも米財政の観点という実際上の意味からも緊要だ」と述べ、増額の前倒しを要請。中山太郎外相は「年末に向けて努力する」と応じました。

 日本は当初、湾岸危機と駐留経費問題は切り離して対処する方針でしたが、米下院が9月中旬に駐留経費全額負担に日本が応じない場合、在日米軍を毎年5千人撤退させる決議案を可決。圧力が強まっていました。

 日米両政府は91年1月14日、日本がそれまで支払ってきた従業員手当に加え、新たに従業員の基本給や光熱費を負担する特別協定に署名。肩代わりする割合は95年度にかけて段階的に引き上げるとしました。

 その後、特別協定は「特例的」どころか恒久化し、日米両政府は来年1月、さらに今後5年間にわたる協定の締結を狙っています。


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