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2021年12月20日(月)

主張

公教育での性教育

科学と人権に根ざした学びを

 コロナ禍でDVや性暴力が増え、中高生からは望まぬ妊娠相談が急増していると報じられています。妊娠を誰にも相談できずに若い女性が一人で出産し、乳児を遺棄するといった痛ましいニュースもありました。背景には、日本の性教育の遅れが横たわっています。

「包括的性教育」が必要

 日本では性教育が圧倒的に足りていません。学習指導要領には、小学5年の理科と中学1年の保健体育で人の受精や妊娠の過程は取り扱わないとする「はどめ規定」があり、授業で性交や避妊について教える妨げとなっていると指摘されています。

 2000年代、東京の養護学校で行われていた性教育に政治が介入する事件が起きました。自民党は「過激な性教育」調査プロジェクトチームを発足させて性教育を妨害・攻撃するキャンペーンを行いました。これが教育現場を萎縮させ、公教育で性教育を実践する困難に拍車をかけました。

 いま子どもたちは、ネットやスマホを通じて、さまざまな性情報に簡単に触れられる環境にあります。幼児期から、そうした情報にさらされる場合も少なくありません。科学的な知識や人権意識を身につけられないまま、ゆがんだ情報に触れれば、予期せぬ妊娠に直面したり、性暴力・性犯罪の被害者・加害者になってしまったりする危険が高まります。

 「性暴力、性犯罪をなくし、互いの性を尊重する人間関係を築くために、科学的な『包括的性教育』が必要ではないか」。日本共産党の田村智子副委員長は10日の参院本会議の代表質問で提起しました。

 「包括的性教育」は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が各国の研究成果を踏まえ、WHO(世界保健機関)などと協力し09年にまとめた「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(18年に改訂)で提唱されました。科学的な根拠に基づき、人権・ジェンダーの視点に立って、子ども・若者の発達・年齢に適した知識、態度、スキル(技能)の獲得を可能にする教育内容が示されています。

 日本で性教育というと、第2次性徴や生殖の仕組みなどを学ぶものと思われがちですが、「包括的性教育」はより広い内容と視野を持っています。たとえば「ボディイメージ」の項目では、5~8歳で「誰のからだも特別で個々に異なりそれぞれにすばらしい」こと、9~12歳で「身体的外見は人としての価値を決めない」ことをそれぞれ学び、自分の体への誇りと肯定感を培うことを目指します。

 「同意、プライバシー、からだの保全」では、5~8歳で「誰もが、自分のからだに誰が、どこに、どのようにふれることができるのかを決める権利をもっている」ことを学習し、不快と感じた時に信頼できるおとなに相談するスキルも習得します。性は人権であることを積極的肯定的にとらえ、自分も他者も尊重しながら適切な行動をとれる力を身につける―こうした性教育が、世界の標準です。

政府の姿勢を変えよう

 田村氏の質問に岸田文雄首相は「学習指導要領に基づき指導している」と答弁し、包括的性教育の導入に応じませんでした。人権や個人の尊厳が本当に大切にされる社会の土台を築くため、国際水準の性教育の公教育への導入に向けて政治は責任を果たすべきです。


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