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2021年12月16日(木)

主張

半導体支援法案

特定企業への巨額助成やめよ

 岸田文雄政権は、半導体製造拠点を国内に建設する企業に助成金を出す法案を、わずか2時間半の経済産業委員会の審議で衆院を通過させました。2021年度補正予算で6170億円の基金を設けます。特定の大企業に巨額の税金を投入することに批判が相次いでいます。質疑の中で助成に上限がないことも明らかになりました。外資・大企業へのばらまきを、おざなりな審議で押し通すことは許されません。

上限の歯止め規定されず

 法案は、特定高度情報通信技術活用システム開発供給導入促進法(5G促進法)と新エネルギー・産業技術総合開発機構法(NEDO法)の二つの法律を改定するものです。高速大容量通信規格(5G)に対応できる半導体を製造する工場の建設に、最大で経費の2分の1を助成します。

 補正予算による助成金の大半は、世界最大手の半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)とソニーの子会社が熊本県で計画している新工場建設に投入されることが想定されています。萩生田光一経産相が建設予定地を視察し、支援に向けて動いています。

 助成額は投資額約8000億円の半分、約4000億円と見込まれます。特定企業の一工場への助成としてかつてない大きさです。国の中小企業対策費1745億円の2倍以上にあたる国費を注ぎ込むことになります。

 1件当たりの助成額の上限を設定する条文は法案にありません。設備投資額が増えれば、事業者の要求に応じて助成額が膨らむ恐れがあります。歯止めない国費投入に道を開くものです。

 電機や自動車に不可欠な半導体は各国で不足が問題になっています。政府は国内生産の必要性を強調しています。しかし半導体の確保はそれを必要としているユーザー企業が自己責任で行うべきものです。

 電機、自動車大企業は54兆円もの内部留保を抱え、半導体確保に充てることのできる潤沢な資金を持っています。にもかかわらず政府は業界に確保の努力を求めることもしていません。

 そもそも日本の半導体産業を衰退させた原因をつくったのは自民党政権です。日本の半導体の世界シェアは1980年代に5割を超えていましたが、今や10%程度です。86年に締結した日米半導体協定は米国の圧力に屈して日本市場での外資系製品のシェア引き上げなど不利な競争条件を取り決めました。政府はその後、国家プロジェクトを立ち上げたりしましたが半導体産業は結局、落ち込んでいきました。

国民の理解は得られない

 失政に真剣な反省もなく「経済安全保障」を名目に法外な大企業支援を重ねても過去の失敗を繰り返すことになりかねません。

 半導体製造装置や素材供給では日本は今も強みを持っています。こうした分野を支える中小企業へのきめ細かな支援によって、ものづくり技術全体を底上げすることこそ政治の役割です。

 コロナ危機で苦境にある中小企業向けの事業復活支援金は持続化給付金の半分です。その一方で特定の外資・大企業に至れり尽くせりの支援をすることは国民の理解を得られません。法案は参院で徹底的に審議し廃案にすべきです。


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