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2021年12月5日(日)

主張

コロナと国際社会

ワクチン格差なくす協力築け

 南アフリカで最初に確認された新型コロナウイルスのオミクロン株のまん延に各国が警戒を強めています。ウイルスは国境を越えた人の移動によって短期間で広がります。パンデミック(世界的流行)は世界全体で対策をとらないと終わりません。先進国と発展途上国の医療格差をなくすことが不可欠です。ワクチンの公平な分配を急ぐとともに、それを保障する国際ルールの構築が求められます。

途上国の遅れ克服が急務

 経済的に貧しい国・地域ほどワクチンの供給が遅れ、接種が進んでいません。

 世界保健機関(WHO)の集計によると、ワクチンの接種を完了した人の割合は米国で58%、欧州で53%に達しました。その一方、アフリカではわずか5%です。人口が多い国では2億人のナイジェリアが1・7%、9千万人のコンゴ民主共和国が0・06%と危機的状況です。

 内戦で混乱する国も、エチオピアが3%、ソマリアと中東のシリアが4%と深刻です。

 国際社会はワクチン調達の枠組み「コバックス」や2国間援助を通じて途上国への供給を進めているものの、供給不足や接種の遅れは解決できていません。WHOが掲げる「年内にアフリカの接種完了率4割」の目標は達成の見通しがありません。

 今年秋の国連総会では、富裕国がワクチンを抱え込んでいるとの批判が途上国から相次ぎました。ワクチンが公平に分配されないなら強い変異株の出現が避けられないと警告した首脳もいました。オミクロン株の広がりはこの課題の切実さを改めて示しています。

 5月には20カ国・地域(G20)が中心となって「世界保健サミット」が開かれ、途上国支援の国際連携を誓いました。

 この会議で製薬大手のファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、低所得国に対し計35億回分を低価格で提供すると表明しました。欧州連合(EU)も、アフリカ諸国に1億回分を提供するとともに、現地でのワクチン製造拠点の整備に投資すると発表しました。日本を含めた主要国と大手製薬会社は途上国対策に役割を果たすべきです。

 利益最優先で製薬大企業や大国がワクチンを独占したのでは、経済的に困難を抱えた国々に行き渡りません。世界貿易機関(WTO)では昨年、南アフリカとインドが新型コロナワクチンの特許権除外を求めましたが、EUや英国などの反対で実現していません。看護師の国際組織は、こうした反対が多くの人命を奪ったとして国連に人権侵害を申し立てました。

公平な分配ルール確立を

 WHOは1日に閉幕した総会の特別会合で、次のパンデミックに備えてワクチンの公平な分配などを明文化する国際ルールの策定に向けて交渉を開始することに合意しました。パンデミックへの対応を決めた条約や国際合意をつくるため、来年3月1日までに交渉を開始します。

 ユニセフ(国連児童基金)など17の国際機関・組織は共同宣言で「皆が互いに関わりあって暮らす世界では全員の安全が確保されない限り、誰一人として安全ではない」と呼びかけています。コロナ危機から教訓を学び、国際協力を具体化する必要があります。


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