しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年12月1日(水)

2021総選挙 攻防のプロセス(上)

「歴史的合意」が対決構図決めた

 10月31日投開票の総選挙はどんな選挙だったのか―。日本共産党の志位和夫委員長は27日の第4回中央委員会総会で「支配勢力―自民・公明とその補完勢力と、野党共闘・日本共産党との攻防のプロセス―“政治対決の弁証法”という角度からとらえることが重要だ」と強調しました。総選挙での自民・公明・補完勢力と野党共闘・日本共産党との攻防のプロセスを振り返ります。


写真

(写真)訴える志位和夫委員長(左から3人目)=10月2日、東京・新宿駅西口

 残暑がぶりかえした10月2日の東京・新宿駅西口。日本共産党の志位和夫委員長がYシャツの袖をまくりあげ訴えました。

政権交代に挑戦

 「今度の総選挙で、日本共産党は党の歴史で初めて、政権交代、新しい政権の実現に挑戦します」

 その土台として、志位氏があげたのが二つの合意でした。一つは、9月8日に立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党首が市民連合と合意した20項目におよぶ共通政策。もう一つが、街宣の2日前、9月30日に立憲民主党の枝野幸男代表(当時)との間で一致した政権協力合意でした。

 前者は、安保法制の違憲部分の廃止、辺野古新基地建設中止、医療費削減政策の転換、消費税減税、原発のない脱炭素社会、選択的夫婦別姓など「安倍・菅政権をチェンジする要となる政策」でした。後者では、「新政権」でこの共通政策実現のために協力し、その際、日本共産党は「限定的な閣外からの協力」とすることで一致したのでした。

 市民連合の中野晃一さんが「野党共闘は長い時間をかけて発展し、今回、衆院選で初めて本格的な野党共闘が実現するところまできました」(本紙10月1日付)と歓迎したように、一歩一歩共闘を前進させてきた努力が実を結んだ画期的な意義を持つものでした。

野党の覚悟込め

 同時に、「政権交代をはじめよう」の訴えには、野党としての覚悟が込められていました。9年間の安倍・菅政治で壊された立憲主義と民主主義、そしてコロナ失政で損なわれた命と暮らし。それを継承する岸田政権のもとで、政権交代を正面から訴えるのは野党の当然の責任であり、国民多数の願いでもあったからです。自民党総裁選がメディアジャックしていた9月の世論調査でも、“安倍・菅路線を引き継ぐ方がよいか”との問いに、「引き継がない方がよい」が約6割にものぼっていました(「朝日」9月13日付)。

写真

(写真)「読売」「朝日」「毎日」10月20日付の総選挙報道。決意を固めあう(左から)社民・福島、共産・志位、立民・枝野、れいわ・山本の各氏=9月8日、参院議員会館

本格的共闘に自公危機感

公示前から「体制選択」攻撃

 志位氏と枝野氏との間で合意した政権合意に対しては、共闘を前進させるために奮闘してきた市民や野党関係者から多くの歓迎の声が寄せられました。

 小林節慶応大名誉教授は「国民を救うには政権交代しかない。…この合意は、希望になりえます」(本紙10月1日付)と述べ、五十嵐仁法政大名誉教授も「自公政権に対抗する野党連合の新政権という選択肢を示しました。まさに、国民に希望の光をともす歴史的合意だった」(同10月2日付)と評しました。

 群馬県で野党共闘の成功に尽力する角田義一元参院副議長は「政権協力で合意をしたニュースを見てこみ上げてくるものがありました。2人ともよくここまで決断をしてくれました。心から敬意を表します」と語りました(同10月8日付)。

 志位氏と枝野氏との合意を受けて、日本共産党の小池晃書記局長が、立憲民主党との候補者の一本化の決定を発表(10月13日)。候補者を一本化した選挙区は、結果として289の選挙区のうち207を数えました。

 こうして、共通政策、政権協力、選挙協力と3点セットがそろい、公示ぎりぎりになったとはいえ、共闘態勢が整ったのでした。

 野党が本格的な共闘態勢で合意をつくり総選挙に臨んだことは、自民、公明両党とその補完勢力にとって心底恐ろしいものとなりました。

政治の根底から

 野党共闘は、2016年参院選、17年総選挙、19年参院選と3回の国政選挙をへて発展。多くの1人区で自公勢力に勝利し、参院では改憲勢力が3分の2を割り込むところまで追い詰めてきました。その野党共闘が本格的な態勢をととのえたうえ、共通政策で自公政治を根底から変える方向を打ち出したことからの恐怖心でした。

 このままでは単に小選挙区で敗北するだけではない、自公政治を根本から変える一歩となる―支配体制が土台から揺らぐことへの強烈な危機感にかられたのです。そのため、総選挙前から一部メディアも動員して、共闘攻撃、共産党攻撃を行いました。

 TBS番組「ひるおび!」に出演する弁護士が「共産党はまだ暴力的な革命を党の要綱として廃止していない」と綱領にもないことをでっちあげた発言(9月10日)に対し、日本共産党は謝罪と撤回を要求。「野党共闘を混乱させ、破壊する意図があります」(立憲民主党の有田芳生参院議員)など他党派や市民からも批判の声が広がり、番組と発言者は謝罪に追い込まれました。

 しかし、現場では候補者一本化した選挙区を中心に街宣や口コミ、あるいは反共ビラや謀略ビラで、猛烈な攻撃が行われていました。たとえば福岡10区では、自民党市議が「社会主義と戦う山本幸三代議士!」との見出しで「我が祖国、日本を、共産党が一定の影響力を保ってしまう政権に任せるわけにはいきません!1ミリでも社会主義に進むことなど断じて阻止しなければなりません」という絶叫調の反共ビラを配布しました(10月10日ごろ)。

写真

(写真)福岡10区で配布された「社会主義と戦う」と書かれた反共ビラ

選挙をねじ曲げ

 同様の攻撃を、自民党の甘利明幹事長(当時)が10月14日の衆院解散当日、NHKインタビューで展開。総選挙に関して聞かれた冒頭の質問でいきなり、「自由、民主主義の思想のもとに運営される政権と、共産主義が初めて入ってくる政権とどちらを選ぶかという政権選択だ」と選挙の性格を根本からねじ曲げる「体制選択論」攻撃を行いました。

 志位氏は即刻、「野党共通政策を読んでから言ってほしい。共通政策にあるように、日本の政治に立憲主義を取り戻す、民主主義を取り戻す、平和主義を取り戻す、そして暮らしの安心と希望を取り戻すのが私たちが求める政権交代であって、なにか体制選択のような話を持ち込むのは、全く見当違いだ」と批判しました。

 こうして、公示前から野党共闘と日本共産党への攻撃が繰り広げられるなか、それでも政権交代をめざす野党共闘の勢いは続き、自公政権継続か野党共闘による政権交代かが客観的争点になっていきました。総選挙の公示日(10月19日)、NHKも「自公政権継続か、政権交代かが総選挙の争点」と報じ、翌日付の全国紙も「自公VS野党共闘」(「読売」)、「野党共闘 自公に挑む」(「朝日」)、「共闘野党 分断狙う与党」(「毎日」)との見出しで選挙戦の対決構図を報じました。

 (つづく)


pageup