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2021年11月1日(月)

主張

国際課税の合意

大企業の税逃れ防ぐ改革前へ

 国境を越えた活動で巨額の利益を上げる多国籍企業に対する国際課税のルールづくりが大きく進展しています。日本を含む136の国・地域が10月に合意文書を発表しました。2022年に国際条約を締結し、23年の実施をめざします。経済のグローバル化、デジタル化を利用した巧妙な税逃れを許さないよう、国際協力で課税する体制をつくります。負担能力のある大企業にきちんと税を払わせる実効ある制度にしていく必要があります。

法人税減税競争に歯止め

 合意の一つは、大企業が負担する法人税率を最低でも15%とすることです。低税率や無税の国・地域に子会社を置いて利益を移し、課税を逃れても15%との差額を親会社の所在国が徴収します。長年続いた法人税の減税競争に歯止めをかける画期的な改革です。売上高7億5000万ユーロ(約990億円)の企業に適用されます。経済協力開発機構(OECD)は世界で年間約1500億ドル(約17兆円)の増収を見込んでいます。

 1980年代以降、大企業の負担を減らせば経済が成長するという新自由主義の主張に基づいて各国が法人税減税を競いました。OECD加盟国平均の法人税率は81年の48%から2020年には23%に下がりました。アイルランド12・5%、ハンガリー9%など海外からの投資呼び込みを狙って税率を極端に下げた国もあります。

 際限のない減税競争の結果、所得を再配分する税の機能が弱まり、社会保障の財源の浸食や庶民増税が横行しました。コロナ危機に直面して各国で格差拡大に批判、反省が強まり、税制の見直しが加速しました。

 合意のもう一つは、デジタル課税の新設です。海外に進出した多国籍企業に対する現行の法人課税は、進出先に工場や支店などを持つ企業を対象としています。グーグル、フェイスブックなどインターネットを使って事業を展開するデジタル大企業は「物理的拠点」を持たないという理由から海外で上げた利益への課税を免れています。この抜け穴をふさぎます。

 新ルールでは物理的拠点の有無にかかわらず、多国籍企業の利益に課税します。世界全体で200億ユーロ(約2兆6000億円)を超える利益を上げ、利益率10%を超える企業が対象です。100社程度の巨大企業が該当するとみられます。売上高の10%を超える利益の25%を、各国・地域に売り上げに応じて配分し課税します。

 今回の合意は、不公平税制の是正を求めて国際的に運動してきた市民の声を受けたものです。市民団体はさらに15%の最低基準の引き上げやデジタル課税の対象企業の拡大を要求しています。

日本は不公平税制是正を

 日本の法人税(国税)は法定税率で23%ですが、研究開発減税や連結納税制度など数々の大企業優遇があるため、企業規模が大きいほど税負担が軽くなります。大企業の実際の法人税負担率は10・2%(19年度)と中小企業の半分程度です。

 大企業に対する優遇税制を見直すことは世界の流れです。かつて法人税減税競争の先頭に立った英国は大企業の税率を現行の19%から23年に25%に引き上げます。日本も不公平税制の是正に踏み出すべきです。


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