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2021年10月30日(土)

気候危機打開に向けCOP26あす開幕 英グラスゴー

不十分な上積み目標焦点に

石炭火力 日本に厳しい目

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(写真)前回のCOP25期間中、集結した市民社会からの参加者=2019年12月13日、マドリード(小梶花恵撮影)

 【ベルリン=桑野白馬】国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が31日から英国グラスゴーで開幕します。8月に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1次作業部会の報告書で、地球温暖化が「差し迫った危機」と捉えられるなか、各国政府の動向が温暖化対策の成否を左右します。

 会議では、温室効果ガスの排出量削減や、脱炭素に向けたルール作りのほか、途上国支援をめぐり議論が行われます。2015年に採択された国際枠組みパリ協定は、世界の平均気温を産業革命前に比べて2度未満におさえ、1・5度未満をめざすことを目標としています。達成には、排出量を30年までに半減し、50年までに「実質ゼロ」を達成する必要があります。

 今年は各国が、より厳しい排出削減目標(NDC)を提出する期限です。ただ、25日に国連気候変動枠組み条約事務局が公表した最新の報告によると、新たに提出された目標値を分析しても、2度未満の達成にすら遠く及びません。パリ協定の目標達成のために、各国の削減目標をどこまで強化できるかが最大の焦点です。

 パリ協定のルールで唯一未解決の、温室効果ガス削減量の国際取引(協定6条)の仕組みで合意することも目指します。

 11月1~2日、COPでは異例の首脳級会合が開かれ、パリ協定に復帰した米国のバイデン大統領をはじめ各国首脳が会場入りします。英国のシャーマ議長は「写真撮影や商売談議の場ではない」とくぎを刺し、各国の公約をより厳しく、確実なものとするよう迫っています。

 議長国の英国は、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電の早期廃止も主要議題に据えています。英国は従来目標を1年繰り上げ、24年に石炭火力を全廃する方針。ドイツでは、新政権樹立に向け交渉中の3党が、従来目標を8年繰り上げ30年までに脱石炭を目指すと合意しました。欧州で脱石炭の動きが加速する一方、日本政府は30年度の電源構成においても約2割を石炭火力に頼る方針。各国から厳しい目を向けられることになります。

 温室効果ガスを大量に排出してきた先進国が、途上国の気候変動対策を支援するために提供する資金に関する議論も注目です。09年、20~25年の間に先進国が年間1000億ドル(約11兆5000億円)を拠出すると表明。ところが、この約束は十分に果たされていません。シャーマ氏によると、年間目標達成は3年遅れた23年になる見通し。そのため、今回のCOPで議論される26年以降の資金提供目標については、先進国と途上国の交渉が難航しそうです。

 会議で最も懸念されるのは、先進国と途上国の平等な参加が担保されていない点です。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限措置や宿泊費の高騰で、島しょ国代表や市民団体が次々と参加を断念。英報道によると、太平洋諸国の3分の1の政府代表が参加できないことが分かりました。気候変動の影響を最も受けやすい国々の声が会議に十分反映されない恐れがあります。

 会議は12日まで。近年は各国の交渉がまとまらず、期間を数日間延長しています。

CO2ゼロ 総選挙の大争点

自公政権に危機感なし

 地球の未来と若者の希望を奪わないで―。気候変動問題への関心が広がり、総選挙の重要な争点になるなか、自公政権のやる気のなさが浮き彫りになっています。麻生太郎自民党副総裁が「温暖化は悪いことばかりではない。北海道のコメがうまくなった」と危機感のなさを露呈すれば、岸田首相も気候変動と人間活動について「科学的検証が前提」などと、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)など国連の報告を無視する非科学的姿勢があらわです。

 選挙戦では、石炭火力や原発に依存し消極的なCO2削減目標に終始する岸田自公政権に対し、日本共産党は最大60%削減(2010年度比)を原発ゼロ・脱石炭で実現する「気候危機打開2030戦略」を対置。世界の流れに逆行する自公政治を転換し、CO2ゼロ、持続可能な成長への道を開こうと訴えています。23日、東京・新宿で開かれた「未来を変えるための市民と野党街宣」では「総選挙は、必要な対策をとらない政府を代えるチャンス」「パリ協定に一番整合性が高いのが、日本共産党の政策」などの発言が、若者や環境活動家から相次ぎました。

各国目標では2.7度上昇に

 国連環境計画(UNEP)が26日に発表した「排出ギャップリポート」によると、各国が掲げた温室効果ガスの削減目標を達成できても、今世紀末に世界の平均気温が産業革命前と比べ2.7度上昇すると算定しています。

 この発表に国連のグテレス事務総長は「人類の未来が2030年までに気温上昇が1.5度に抑えられるかにかかっている」と指摘。これまでは「1.5度」目標を掲げるパリ協定の締約国がこの目標を手の届く範囲に置くことに「失敗している」と述べています。

COP26の主な日程(見込み)

10月31日  開会会合

11月1、2日 世界リーダーズサミット(各国首脳が参加)

     4日 議長国テーマ「エネルギー」

    12日 閉会会合?


 COP 締約国会議(Conference of the parties)の英語の頭文字を取った略語。地球温暖化防止のための国連気候変動枠組み条約(1992年採択、94年発効)のすべての締結国が参加する最高意思決定機関。条約の実施状況を評価し、実施を促進するための決定を行います。年1回開催。


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