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2021年10月7日(木)

鶏卵大手前代表 有罪

吉川元農水相に賄賂500万円

東京地裁 「前例のない便宜供与」

 元自民党衆院議員で元農林水産相の吉川貴盛被告(70)=収賄罪で起訴=に現金計500万円を渡したとして贈賄罪などに問われた鶏卵大手「アキタフーズ」(広島県福山市)前代表の秋田善祺(よしき)被告(87)の判決が6日、東京地裁でありました。向井香津子裁判長は「政策実現を目的とした贈賄行為」だとして同被告に懲役1年8月、執行猶予4年(求刑懲役1年8月)を言い渡しました。

 判決は、秋田被告が吉川被告の農水相在任中に計3回、養鶏業界に便宜を図ってもらう目的で計500万円の現金を提供したと認定。主体的判断で積極的に「多額の現金を賄賂として繰り返し供与した」と悪質性を指摘しています。

 日本養鶏協会を実質的に統括・運営する立場だった秋田被告は2018年11月12日、家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の理念に基づいて国際機関が示した基準案に、農水省が反対意見を表明するよう要望。直後の同月21日、東京都内のホテルで吉川被告に現金200万円を手渡しました。

 19年3月26日には、謝礼と今後の取り組みに期待して吉川被告に現金200万円を提供。同年8月2日にも、日本政策金融公庫から養鶏業界への融資条件緩和を目的に現金100万円を手渡しました。

 贈賄の結果、農水省の担当者と養鶏業者による打ち合わせや、この2者に国会議員を加えた陳情会議が開かれました。判決は、これらの事実から「前例のない便宜供与が行われた」とし、賄賂性があったと判断。不正な手段で「農林水産行政や国政に対する国民の信頼を大きく害した」と非難しました。

 秋田被告は、19年に吉川被告と河井克行元法相の政治資金パーティー券(計534万円分)を購入した際、複数の社員が個人で買ったように偽装し、政治資金規正法違反の罪にも問われています。

 判決は、名義を偽装することで政治資金収支報告書に記載する義務が生じない20万円以下の金額に分けたとして「法の趣旨を踏みにじるものであり、身勝手で悪質だ」と指摘しました。

 これまでの公判で吉川被告は、秋田被告から現金を受領した事実を認めた上で「政治献金と受け止めた」と無罪を主張しています。

 秋田被告の代理人の梅林啓弁護士は、控訴せず判決を受け入れる意向を表明。「(吉川被告が)大臣になる前や後にも(現金の提供は)あったが、農水相としての職務権限が付いた時点で趣旨が変わる。法律家としては賄賂であることは否定できない」と述べました。

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