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2021年10月2日(土)

ジェンダー平等の日本へ いまこそ政治の転換を

2021年10月1日 日本共産党

 日本共産党の田村智子政策委員長が1日の記者会見で発表した党の政策「ジェンダー平等の日本へ いまこそ政治の転換を」の全文は次の通りです。


 いま私たちの社会は、口先だけの「男女共同参画」や「多様性の尊重」でなく、本気でジェンダー平等に取り組む政治を渇望しています。

 コロナ危機は女性にさまざまな犠牲を強いました。低賃金の非正規雇用で働く多くの女性が仕事を失い、「ステイホーム」が強いられるもとでDV被害が急増し、女性の自殺の増加率は男性の5倍にも達しました。子ども、少女たちへの虐待・性被害相談も急増し、民間団体まかせは限界に達しています。

 ここには、圧倒的に世界から遅れた日本の政治の責任があります。

 日本は、各国の男女平等の達成度を示す「ジェンダーギャップ指数2021」(世界経済フォーラム)で、156カ国中120位と、先進国として異常な低位を続けています。

 女性差別撤廃条約の採択(1979年)から42年。日本政府は1985年にこれを批准しながら、具体化・実施にまともに取り組んできませんでした。いま大きな問題になっている「男女賃金格差の縮小」も「選択的夫婦別姓への法改正」も、繰り返し国連の女性差別撤廃委員会から是正勧告を受けてきたにもかかわらず、まともにとりあわず、無視し続けてきたのです。

 コロナ危機を経て、ジェンダー平等を求める国民の声は劇的に高まっています。「わきまえない」「もう黙らない」と急速に広がった女性たちの声が、女性差別発言をした五輪組織委員会会長を辞任に追い込みました。「生理の貧困」が話題になる中、これまでタブー視されていた生理の問題にも光が当たりました。「フェミサイド(女性を標的にした殺人)のない日本を」「フェミサイドは痴漢など日常の暴力の延長にある」と大学生たちが署名に立ち上がりました。私たち日本共産党は#WithYou(あなたとともに)の立場で連帯し、ともに声を上げていきます。

 ジェンダー平等の社会とは、誰もが性別にかかわらず個人の尊厳を大切にされ、自分らしく生きられる、すべての人にとって希望に満ちた社会です。日本共産党は、来たる総選挙で、ジェンダー平等を大争点の一つと位置づけ、政治の転換を目指して全力をあげます。

1 男女賃金格差の是正をはじめ、働く場でのジェンダー平等を進めます

男女の賃金格差を政治の責任で是正します

■大きな男女の賃金格差――“生涯賃金で1億円”もの格差

●正社員でも、女性の賃金は男性の7割 (厚生労働省 賃金構造基本統計調査)

●非正規を含む平均給与は、男性―532万円、女性―293万円 (国税庁 民間給与実態統計調査)

●40年勤続だと生涯賃金では1億円近い格差に。年金でも大きな男女格差になり、定年まで働いても年金で生活できない女性も。

《国連からの勧告》

○性別賃金格差を縮小するため、取り組みを強化すること

 賃金の平等はジェンダー平等社会を築くうえでの土台中の土台です。

 EU(欧州連合)では、女性の賃金は男性の8~9割になっていますが、この格差を重大な問題として、今年3月、男女の賃金格差公表を企業に義務づけ、透明化をテコに是正させるEU指令案を発表しました。是正しない企業への罰金、ペナルティーも含まれています。

 ところが日本では、自公政権が企業に男女賃金格差の実態を公表させることを拒み続けています。安倍政権がつくった「女性活躍推進法」では、賃金格差公表義務を盛り込むことさえ、財界の反対の意向をうけて拒絶しました。公表にすすむどころか、1999年3月までは有価証券報告書で記載が義務付けられていた男女別平均賃金を「省令改正」で削除するなど、賃金格差の実態を覆い隠す逆行を行ってきたのです。

○企業に男女賃金格差の実態の把握・公表と、その是正計画の策定・公表を義務付けます

――企業に男女別平均賃金の公表、格差是正計画の策定・公表を義務づけます。国は、その是正計画が実行されるように指導・監督を行います。

――国としても、職種、時間当たり、企業規模、地域ごとに、男女賃金格差の実態を把握、分析し、国としての是正の行動計画を策定します。

○女性が多く働く介護・福祉・保育などケア労働の賃金を引き上げます

 保育や介護など女性が多く働くケア労働は、高度な専門性をもつ仕事でありながら、低賃金であるのが当たり前にされ、平均給与は全産業平均より月約10万円も低いという実態が長らく放置されてきました。

――国が基準を定めている介護、保育の賃上げや労働条件の改善、配置基準の見直しを国の責任で行うとともに、雇用の正規化、長時間労働の是正に取り組みます。

○非正規から正社員への流れをつくるとともに、非正規雇用の労働条件改善と均等待遇を進めます

 労働法制の規制緩和によって、女性の非正規雇用化が進み、働く女性の56%がパート、派遣、契約などの非正規雇用です。

――非正規から正社員への流れをつくります。労働者派遣法を抜本改正し、派遣は一時的・臨時的なものに限定し、常用雇用の代替を防止する、正社員との均等待遇など、派遣労働者の権利を守る派遣労働者保護法をつくります。

――最低賃金を1500円に引き上げます。そのために、社会保険料の減免や賃金助成など中小企業への支援を抜本的に強化します。

○実質的な女性差別を横行させている間接差別をなくします

 明文上は性別差別でなくても、転勤や長時間労働に応じるかどうかで、基本給や昇給昇格での差別を当然とする就業規則や雇用慣行によって、実際には女性を差別し、賃金格差の要因になっている間接差別をなくします。

――労働基準法をはじめとする関係法令に、間接差別の禁止、同一価値労働同一賃金の原則を明記し、差別の是正を労働行政が指導できるようにします。

家族的責任と働くことを両立できる労働のルールをつくります

 女性は、男性の長時間労働を支えるために、家族的責任をより重く担うことが当然とされてきました。男性も、子育てに参加したくてもできない実態が広く存在しています。長時間労働をなくすことは、ジェンダー平等社会の実現に不可欠です。

――過労死をうむ異常な長時間労働をなくし、「8時間働けばふつうに暮らせる社会」にします。いますぐ残業時間の上限を「週15時間、月45時間、年360時間」にします。

――家族的責任を持つ労働者は、男女を問わず、単身赴任や長時間通勤を伴う転勤を原則禁止し、看護休暇や育児介護休業制度を拡充します。残業は本人同意を原則とします。これらの措置が、昇給昇格において不利益な評価とされることを禁止します。

ハラスメントを明確に禁止し、なくします

●セクハラに対する刑事罰、民事救済の規定を持つ法律がない国は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本、チリ、ハンガリーの3カ国だけ。(世界銀行、2018年調査)

●ILO(国際労働機関)は2019年、「労働の世界における暴力とハラスメント禁止条約」(190号条約)を採択。日本経団連は、就活生など雇用関係にない人が保護の対象となることに異を唱え、棄権。

《国連からの勧告》

○職場でのセクシュアルハラスメントを防止するため、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと

 ハラスメントは、女性が働き続けることを阻害する大きな要因の一つです。現行法は、予防措置を事業所などに義務づけているだけで、ハラスメント禁止が明文化されておらず、セクハラ、マタハラ、パワハラ、SOGI(ソジ)ハラなどが人権侵害であり犯罪であるということが徹底されていません。

――ハラスメント禁止規定をもつ実効ある法整備を進め、働く場での暴力とハラスメントを広く禁じたILO190号条約を批准します。

――ハラスメントの加害者の範囲を、使用者や上司、職場の労働者にとどめず、顧客、取引先、患者など第三者も含めるとともに、被害者の範囲も就活生やフリーランスを含め、国際水準並みに広く定義します。

――被害の認定と被害者救済のために、労働行政の体制を確立・強化するとともに、独立した救済機関を設置します。

――お茶くみやメガネ禁止、パンプスやミニスカートの制服などが女性のみに課されている職場での慣行をなくす規定を盛り込んだ法律を制定します。

2 選択的夫婦別姓、LGBT平等法を実現し、多様性が尊重される社会をつくります

●法律で夫婦同姓を義務づけている国は日本だけ。

●結婚時に女性が改姓する例が96%。

●同性婚を認める国・地域は約30。日本でも同性カップルを認証するパートナーシップ制度を導入する自治体が118に広がり、総人口の40%をカバー。(「自治体にパートナーシップ制度を求める会」調べ)

●選択的夫婦別姓「賛成」が78%(20~30代) (2020年11月、早稲田大学法学部・棚村政行研究室/選択的夫婦別姓・全国陳情アクション合同調査)

●同性婚「認めるべき」が86%(18~29歳)(2021年3月、朝日新聞世論調査)

《国連からの勧告》

○女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の氏の選択に関する法規定を改正すること

 夫婦・家族のかたちはさまざまであり、それぞれの選択に寛容な社会をつくっていくことが急務です。世論調査でも、とりわけ若い世代の中で、選択的夫婦別姓や同性婚の導入に賛成の意見が多数であり、実現の機は熟しています。

 しかし、自民党は党内に強固な反対派議員を抱え、結局は選択的夫婦別姓も同性婚もLGBT差別反対法も、すべて実現にフタをしてきました。もういいかげんに実現しましょう。そのためには自民党政権を終わらせる以外にありません。

――選択的夫婦別姓制度をいますぐ導入します。

――同性婚を認める民法改正を行います。

――LGBT平等法を制定し、社会のあらゆる場面で性的マイノリティーの権利保障と理解促進を図ります。

3 「痴漢ゼロ」の実現、女性に対するあらゆる暴力を根絶します

●コロナ禍のもと女性への暴力が増大。DV被害相談は前年の1・6倍、性暴力被害ワンストップ支援センターへの相談は前年の1・2倍に。

 性暴力は取り返しのつかない「魂の殺人」であり、ジェンダー格差再生産の要因でもあります。その根絶は政治の緊急かつ根本の課題です。

「痴漢ゼロ」を政治の重要な課題に位置づけます

 女性や子どもにとって、もっとも身近な性暴力が痴漢です。日本共産党東京都委員会の痴漢被害アンケート調査(1435人が回答)では、ほとんどの女性が経験し、その後の人生に深刻な打撃をこうむりながら、被害を訴えることもできない実態が明らかになりました。政治がこれを正面から問うてこなかったことが、痴漢を“軽い問題”扱いし、女性の尊厳を軽んじる社会的風潮を広げてきました。

――痴漢被害の実態を調査し、相談窓口の充実、加害根絶のための啓発や加害者更生を推進します。そのために内閣府に担当部局を設け、警察庁や民間事業者とも連携しながら政府あげて取り組むことを求めます。

刑法・DV防止法を改正し、被害者支援を強めます

《国連からの勧告》

○強姦(ごうかん)の定義を拡張するとともに、性犯罪の職権による起訴を確保するための刑法の改正を促進すること

○配偶者強姦が明示的に犯罪化されていないこと、性交同意年齢が13歳のままであることを懸念する

――刑法性犯罪規定について、暴行脅迫要件の撤廃、同意要件の新設、地位関係利用型の犯罪化、公訴時効の廃止、性交同意年齢の引き上げなど、性被害の実態に見合った改正を早急に進めます。

――「性的な写真をSNSにアップされた」「女性が意見を主張すると誹謗(ひぼう)中傷が殺到」など、オンライン上の暴力は人の命すら奪いかねない人権侵害です。通報と削除の仕組みの強化、被害者のケアの体制をつくります。

――DV防止法を改正し、緊急保護命令の導入や保護対象の拡大、加害者更生プログラムの整備などを進めます。

――性暴力被害ワンストップ支援センターに対する予算の抜本的な拡充、若年女性やさまざまな困難を抱える女性がアクセスしやすい相談窓口、シェルターの拡充など、性暴力、DV・虐待被害者支援を緊急に強めます。

日本が責任を負う戦時性暴力=「慰安婦」問題の解決を進めます

《国連からの勧告》

○指導者や公職にある者が「慰安婦」問題に対する責任を過小評価し、被害者を再び傷つけるような発言はやめること

○被害者の救済の権利を認め、十分かつ効果的な救済および賠償を提供すること

○「慰安婦」問題を教科書に適切に組み込み、歴史の事実を子どもたちや社会に客観的に伝えること

――日本政府に、日本軍「慰安婦」に対する加害の事実を認め、被害者への謝罪と賠償の責任をはたさせます。「軍の関与と強制」を認め、歴史研究や歴史教育を通じて「同じ過ちを決して繰り返さない」とした「河野談話」にそい、子どもたちに歴史の事実を語り継いでいきます。

4 リプロダクティブ・ヘルス&ライツの視点にたった政治を

■リプロ(性と生殖)に関する日本の遅れ

●教育の遅れ――「寝た子を起こすな」などの性教育に対するバッシングが2000年代に自民党によって行われた影響が尾を引き、公教育での性教育がきわめて不十分

●避妊の遅れ――女性に選択権がある多様な避妊法が十分に普及しておらず、緊急避妊薬も入手しづらい

●中絶の遅れ――女性の心身を傷つける掻爬(そうは)法が中絶手術の主流となっており、70カ国以上で承認されている経口中絶薬が未承認

●法律の遅れ――刑法の堕胎罪、中絶に配偶者の同意を要件とする母体保護法など、女性差別的な法律が残っている

《国連からの勧告》

○思春期の女子および男子を対象とした性と生殖に関する教育が学校の必修カリキュラムの一部として一貫して実施されることを確保すること

○刑法の堕胎罪をなくすこと

○母体保護法を改正し、配偶者の同意要件をなくすこと

 リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)は、子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決める基本的人権です。性と生殖に関する健康や、それについての情報を最大限享受できることも、大事な権利の一環です。

 ところが日本では、性教育がきわめて不十分です。子どもたちは、人間の生理や生殖、避妊についての科学的な知識も、互いを尊重し合う人間関係を築く方法も、自分の心や体を傷つけるものから身を守るすべも十分に学べないまま、成長していきます。社会には意図的に中絶へのスティグマ(負の烙印〈らくいん〉)が広げられ、明治期から残る刑法の自己堕胎罪もあいまって、多くの女性が深い苦しみを抱えてきました。リプロ(性と生殖)に関しても、先進国ではありえない遅れを抱えているのが日本です。

 一方、過去1年間に金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある若者が5人に1人にのぼることが明らかになり(「みんなの生理」アンケート、2021年3月)、「生理の貧困」がみんなの問題として議論される大きな前向きの変化も生まれました。

――子どもの年齢・発達に即した、科学的な「包括的性教育」を公教育に導入します。

――避妊も中絶も、女性の大切な権利です。避妊薬と緊急避妊薬を安価で入手しやすくします。中絶薬を早期に認可し、中絶医療を国際水準まで高めます。

――明治期から残る刑法の自己堕胎罪や、母体保護法の配偶者同意要件を廃止します。

――生理用品の恒久的な無償配布、学校など公的施設のトイレへの設置を進めます。非課税の対象とするなど、より安価で入手しやすくします。

――職場や学校などでも生理に関する知識や理解を深め、女性が過ごしやすい環境を整えます。

――安全な妊娠・出産のための周産期医療体制を充実させます。国の制度に位置づけられた産後ケアセンターを充実させます。

5 意思決定の場に女性を増やし、あらゆる政策にジェンダーの視点を貫く「ジェンダー主流化」を進めます

 90年代以降、世界は「ジェンダー主流化」を合言葉に、根強く残る男女格差の解消を進めてきました。「ジェンダー主流化」とは、あらゆる分野で、計画、法律、政策などをジェンダーの視点でとらえ直し、すべての人の人権を支える仕組みを根底からつくり直していくことです。

 そのためにも、政治家や、企業の管理職はもちろん、各種団体、地域など、あらゆる場面で女性の参画を進めることが求められています。意思決定の場に女性を増やすことは、ジェンダー平等を進めるために欠かせません。

――「2030年までに政策・意思決定の構成を男女半々に」の目標をかかげ、積極的差別是正措置を活用した実効性ある本気の取り組みを進めます。

――政治分野における男女共同参画推進法の立法趣旨に沿い、パリテ(男女議員同数化)に取り組みます。民意をただしく反映するとともに女性議員を増やす力にもなる比例代表制中心の選挙制度に変えます。高すぎる供託金を引き下げます。

――女性差別撤廃条約を実効あるものにするため、「調査制度」と「個人通報制度」を定めた選択議定書を、早期に批准します。

二つの大問題を断ち切りましょう

 世界でも異常な日本のジェンダー平等の遅れの大もとには、二つの大問題があります。

 一つは、明治時代に強化されたジェンダー差別の構造を、自民党政治が今日まで引き継いでいることです。「男性が主、女性は従」「女性は結婚したら家に入る」など、明治憲法下の家父長制の日本を「美しい国」だったと考える人たちが自民党政権の中枢にすわっているために、選択的夫婦別姓も、同性婚・LGBT平等法も、実現をはばまれ続けています。

 もう一つは、女性を安上がりの労働力として利用したいという財界の意向のままに、自民党政治が女性差別の構造を幾重にも積み重ねてきたことです。とくにこの間、女子保護規定の撤廃、派遣労働の全面解禁、労働時間規制の緩和などの雇用破壊が進み、子どもがいる女性は非正規を選ばざるを得ない状況に追い込まれてきました。

 古い価値観と財界言いなりの政治――この二つを断ち切るには自民党政治を終わらせる以外にありません。日本共産党は綱領に「ジェンダー平等社会をつくる」ことを掲げ、全国津々浦々で湧きおこっている運動と声なき声に「ともにある」という姿勢で連帯することを決議した党として、この総選挙で新しい日本を切り開くために力を尽くします。


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