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2021年9月15日(水)

特養利用料 月4万円も負担増

低所得高齢者 悲鳴と怒り

家族「自公政権は冷酷」

8月から制度改悪

 特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入所する低所得者の食費・居住費を補助する制度(補足給付)が8月から改悪され、月約2万~7万円の負担増となる人が続出しています。9月に入って改悪後初の利用料請求が届き、入所者や家族に驚きと怒りが広がっています。(前田美咲)


補足給付制度の収入・資産要件
改悪前 改悪後
年金収入等
 80万円以下
単身1000万円以下
夫婦2000万円以下
単身650万円・
夫婦1650万円以下
年金収入等
 80万円超
 120万円以下
単身550万円・
夫婦1550万円以下
年金収入等
 120万円超
 155万円以下
単身500万円・
夫婦1500万円以下
※いずれも住民税非課税世帯(非課税の基準は自治体ごと)。世帯分離していても「夫婦」とみなす
※年金収入等には、非課税年金やその他の合計所得金額を含む
※生活保護世帯については要件、負担額とも変更なし

 「母の年金だけでは支払えない上昇率だ」。兵庫県で1人暮らしをする59歳の男性は、急激な負担増に憤ります。特別養護老人ホームで暮らす89歳の母親が、改悪によって補助を受けられなくなり、月約6万円の利用料が11万円弱に跳ね上がりました。

 母親の年金は年120万円余り。8月から資産要件が厳格化されたことで、貯金額が基準を上回って対象から外れることが分かり、補助の更新申請を諦めたといいます。

 資産要件は、7月まで一律「単身1000万円・夫婦2000万円」以下だったのが、8月から収入に応じて単身500万~650万円、夫婦1500万~1650万円に厳格化(表)。対象から外れると補助が一切なくなり、食費・居住費が全額自己負担となります。補助額の大きかった低収入の人ほど負担増額が膨れ上がり、最大月6・9万円に上ります。

 男性は介護疲れから離職。精神疾患も患い、障害年金と作業所の工賃月11万円弱をやりくりする生活です。「新たに月4万円強もどうやって捻出したらいいのか。いきなり資産要件を半額にし、大幅負担増とは納得できない。消費税増税分を社会保障に回すなんてうそだった。作業所をやめ、母を退所させて、自宅介護で共倒れするしかない。『貯金があるなら使いきれ』『自助・共助・公助』という弱者軽視の自公政権の冷酷な思想が表れている」

介護補足給付の改悪

「野党共闘で政治変えよう」

補助受けられても負担増

補足給付の食費負担の見直しによる負担増額
対象区分 80万円以下 80万~
120万円以下
120万~
155万円以下
特養など4施設
(月額)
変更なし 変更なし 2万2010円
ショートステイ
(日額)
210円 350円 650円
年収80万円以下でも生活保護世帯は変更なし

 8月から対象が縮小された介護の補足給付制度。安倍・菅政権は、2019年に打ち出した改悪を、新型コロナ危機のもとでも見直しませんでした。法改正を経ず、施行令の改正だけで済ませたことで国会審議を免れ、多くの国民が知らない間に強行しました。

 8月の制度見直しで、資産要件に加え収入要件も改悪しました。資産要件を満たし、引き続き食費・居住費の補助の対象になったとしても、年金収入などが年120万円を超えると、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型施設、介護医療院)の1日の食費はこれまでの650円から1360円に跳ね上がります。

 さらに、普段は自宅で過ごし、決まった期間だけ施設で過ごすショートステイの食費では、年収80万円以下の人をはじめ補助を受ける大半の利用者が値上げの対象となっています。収入に応じて日額210~650円の負担増となります。

 岩手県宮古市の男性(71)は8月末、94歳の母親が入る特別養護老人ホームからの通知に目を疑いました。食費負担が倍以上、月額にして2万2000円増となることが分かったからです。

 月13万円余りの母親の年金のうち、約11万円が利用料に消えることになります。自身も年金暮らしの男性は、「資産要件にかからなければ負担増はないと思って安心していたのに。母からは電話で欲しいものをリクエストされることもあり、今まではほぼ叶えることができていたが、これからは厳しくしないといけないかもしれない」と肩を落とします。

 「施設や市役所からの通知には“今度からこの額になる”としか書かれておらず、請求書が届いて負担増にびっくりする人が多いのではないか」と心配する宮古市の男性。自公政権の社会保障切り捨てに憤ります。「総選挙が迫っている。低所得者、高齢者に負担増を強いる政権のひどさを多くの人に伝え、『野党共闘で政治を変えよう』と広げていきたい」


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