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2021年8月17日(火)

主張

菅政権と8・15

過去の反省なしに未来はない

 菅義偉首相が就任後初めて終戦記念日の全国戦没者追悼式で式辞を述べました。アジア諸国への侵略戦争に一切言及せず、歴史と向き合うことを誓う文言もありませんでした。侵略戦争を美化する靖国神社に菅首相が玉串料を納め、13日と15日に計5人の閣僚が参拝したことも、過去に無反省な政権の姿をあらわにしました。植民地支配を問い直す世界の流れに逆らう態度は許されません。

無反省の継承許されない

 菅首相は「先の大戦では、300万余の同胞の命が失われました」と述べたものの、日本が引き起こしたアジア・太平洋戦争で2000万人を超すアジア諸国民の命を奪ったことにまったく触れませんでした。

 その一方、安倍晋三前政権が集団的自衛権の行使容認を正当化する意味で使った「積極的平和主義」の旗の下で世界の課題に取り組むと表明しました。いずれも前首相の式辞をそっくり引き継いだものです。

 第2次安倍政権以前の歴代首相は全国戦没者追悼式の式辞で、アジア諸国の人々に多くの苦しみを与えたこと、この事実を謙虚に受け止めて反省することを例年表明してきました。2007年、第1次政権当時の安倍首相もこの表現を踏襲しました。

 しかし安倍氏は12年に政権復帰した後、この文言を一掃しました。首相として最後の20年の式辞では、19年にはあった「歴史の教訓を深く胸に刻み」との表現を消し去り、「積極的平和主義」を初めて盛り込みました。本来は、ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥング氏が、戦争の根源にある構造的な暴力をなくす意味で提唱した考えです。前政権は、海外で戦争する国づくりを正当化する言葉として、ゆがめて使いました。

 安倍氏は15年、終戦70年にあたっての首相談話で「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と、朝鮮半島の植民地化を進めた日露戦争を賛美しました。一国の首相が植民地支配を公然と美化することは決して許されません。官房長官としてこの談話に関与したのが菅氏でした。

 いま世界では過去にさかのぼって植民地支配や奴隷制度の不当さを問い直す動きが発展しています。昨年、米国で起きた白人警察官による黒人暴行死事件を機に、人種差別、排外主義の根絶を求めるたたかいが広がりました。差別の根底に、過去の植民地支配や奴隷制度があることが改めて注目され、今日に続く問題として解決を迫られています。ドイツ政府は植民地だったナミビアで20世紀初頭に犯した大虐殺を公式に謝罪し、補償を表明しました。

侵略の不正義正してこそ

 国連のバチェレ人権高等弁務官は植民地主義、奴隷貿易の真実の解明と被害への賠償を求め「過去に対処するための措置は、私たちの未来を変えるでしょう」と述べました。

 日本軍国主義による侵略戦争と植民地支配がアジア諸国に多くの被害を与えた歴史的事実を認め、自ら犯した不正義を正すことは日本がアジアの一員として生きていく上で必要不可欠です。過去を反省しない菅首相の姿勢では、世界各国と未来に向かって本当の信頼と友好を築くことができません。


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