しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年8月14日(土)

主張

IPCC報告書

地球の危機打開へ行動直ちに

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第6次報告書を公表しました。今後20年以内に世界の平均気温が産業革命前と比べて1・5度上昇する可能性があると警告しました。地球温暖化は速まっています。今世紀末に上昇を1・5度以内に抑えることを目指す国際的枠組み「パリ協定」やIPCC「1・5度特別報告」の目標達成に緊急性が増していることが改めて示されました。各国が温室効果ガスの削減目標をさらに引き上げることをはじめ、地球が直面する危機を打開するため直ちに行動する時です。

「パリ協定」完全実施を

 IPCCは気候変動について科学的な評価を行う国際組織です。195カ国・地域から科学者や政府関係者が参加しています。

 地球温暖化の原因について報告書は、2013年の前回報告書より踏み込んで「人間の活動が主要な要因であった可能性が極めて高い」と明記しました。地球環境を犠牲にして突き進んでいる経済活動が原因であることは疑う余地がないとしています。

 報告書は、温室効果ガスの排出抑制に応じた五つのシナリオごとに世界の平均気温上昇を評価しました。どの場合でも40年までに上昇幅は1・5度に達し、排出量が「非常に高い」最悪のシナリオでは今世紀末までに4・4度上昇すると予測しました。

 既に1・1度上昇した現在でも50年に1度の熱波の起こりやすさは1850年~1900年平均の4・8倍、10年に1度の豪雨は1・3倍になっているといいます。1・5度上昇した場合はそれぞれ8・6倍、1・5倍に高まります。異常気象の頻発は人類の生存を脅かす大問題です。

 一方、報告書は、1・5度目標は実現可能であることも示しました。最も排出量を減らす「非常に少ない」シナリオでは1・4度に収まります。そのためには2050年ごろまでに温室効果ガスの排出を実質ゼロにした上で、大気中の二酸化炭素をさらに減らさなければなりません。

 パリ協定の完全実施は各国の責務です。10月に英国で開かれる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で排出削減目標の引き上げをはじめ対策の強化、加速が話し合われます。

 欧州連合(EU)は30年までに1990年比55%減、英国が2035年までに78%減の目標を掲げています。米国もバイデン政権下で05年比50~52%減とする目標を打ち出しました。

 菅義偉政権は昨年10月、「実質ゼロ」を掲げました。ところが「30年度に13年比26%減」の目標のままでは、実質ゼロの達成は無理だと批判を浴び、ようやく4月に46%減を表明しました。それでも低い目標です。

菅政権は目標引き上げよ

 菅政権は、7月に公表した次期エネルギー基本計画案でも石炭火力発電と原発の存続に固執しています。1・5度以内に抑えるために不可欠な石炭火発の全廃に反する方針です。東京電力福島第1原発事故の教訓にも学ぼうとしません。省エネの徹底と、自然破壊や乱開発を許さない規制ルールを定めた再生可能エネルギーの飛躍的普及で脱炭素の道に踏み出すとともに、削減目標の引き上げをはかるべきです。


pageup