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2021年8月12日(木)

ウィシュマさん死亡事件 最終報告書

入管の対応正当化

裁量権乱用 浮き彫り

 3月に名古屋出入国在留管理局でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が亡くなった事件の最終報告書(出入国在留管理庁調査チーム、10日公表)は、死因さえ特定しないまま名古屋入管の対応を正当化する内容となっています。収容者を一時的に解放する仮放免制度で裁量権を乱用する実態も浮き彫りになっています。

 同報告書は死因について、「複数の要因が影響した可能性があり、死亡に至った具体的な経過を特定することは困難」だとして特定せず、刑事事件として捜査中なのを理由に「司法解剖の鑑定書の入手、解剖医からの聴取はできなかった」と釈明しています。施設内での処遇状況と死亡との因果関係にも触れていません。

 ウィシュマさんの健康状態については、2月15日に尿検査を行い、基準値を超える値が出ていたことを初めて示し、死因を分析した外部の医師が「生体が飢餓状態にあることを示唆」と指摘したと記しました。

 ウィシュマさんの死亡事件が国会で一大焦点となっていた4月に出された中間報告では、この日の尿検査に言及がありません。健康状態の悪化を示す決定的な記録が、隠ぺいされていた疑いがあります。

 健康状態の悪化していたウィシュマさんをなぜ仮放免しなかったのかについても、最終報告書は「相応の根拠や理由があり、不当なものであったとまでは評価できない」と名古屋入管を擁護しています。

 仮放免の判断基準は公開されておらず、入管の裁量次第となっています。最終報告で不許可の理由として挙げられているのは、「仮放免を許可すれば、ますます送還困難となる」「支援者に煽(あお)られて仮放免を求めて執ように体調不良を訴えてきている」「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」などです。収容・送還ありきの姿勢の下、体調悪化の事実をゆがめて捉え、仮放免制度の趣旨をねじまげて脅しの道具と捉える入管の実態が表れています。(前田美咲)

幕引き許されぬ 閉会中審査要求

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 日本共産党・藤野保史衆院議員の話 入管施設で死亡事件が繰り返されている根本には、全件収容主義など入管庁が全ての裁量を握っていることがありますが、そこに全くメスが入っていません。ウィシュマさんの死亡事件についても、入管庁がとった措置を正当化することに終始しており、これで幕引きなど絶対に許されません。ウィシュマさんが亡くなるまでの2週間の様子を撮ったビデオの全面開示を含め、第三者による検証が不可欠です。閉会中審査を強く求めていきます。


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