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2021年8月9日(月)

感染爆発のなか五輪閉幕

「命最優先」求め 中止の声最後までやまず

 東京オリンピック大会が8日、閉幕しました。7月23日の開幕日に4204人だった全国の新型コロナウイルスの新規感染者数は、7日に過去最多の1万5743人となりました。開催都市・東京に緊急事態宣言が発令されるもとで開幕し、かつてない爆発的な感染拡大のなかで閉幕するという、五輪史上前例のない大会となりました。(政治部コロナ取材班)


グラフ

 医療体制が逼迫(ひっぱく)し、入院できずに自宅待機を余儀なくされる人が急増し、命の危機が日増しに高まるなか、期間中も「五輪はやめて、命を守れ」の声がやむことはありませんでした。「開くべきではなかった」大会だったことが浮き彫りになっています。

安全・安心 完全に破綻

 「国民の命と安全を守るのは私の責務」「守れなければ(五輪を)やらないのは当然」。菅義偉首相は6月9日の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長にこう答弁しました。しかし大会期間中に起きたのは感染爆発の現実です。「安全・安心な大会」は完全に破綻しました。

 全国で新規感染者数は連日のように最多を更新。とりわけ開催都市の東京では開会前の7月14日に新規感染者数が1000人を突破。開幕日は1359人でしたが、8月5日には過去最多の5042人に達しました。感染者の急増は医療逼迫を急速に進め、東京では入院調整中の人が7月23日の2469人から8月7日には1万2160人に。自宅療養中の人は5172人から1万8444人へと膨れあがりました。

 開幕時に東京と沖縄に出されていた緊急事態宣言は、7月30日に6都府県に拡大。期限も8月末まで延長され、まん延防止等重点措置も開幕時の4府県から13道府県に拡大しました。

 五輪組織委と内閣官房が公表した大会関係者の感染者数も8日正午までに449人に上り、世界的な感染拡散の深刻な危険も懸念されます。

写真

(写真)青木正美さん

 五輪開催の危険性を発信し続けている青木正美日本女医会理事は「五輪開催のために全国から集めた警察官やバスの運転手、大会スタッフが各地方に帰っていきます。五輪によって、東京の感染拡大が全国に広がる危険性が高いと思います。医療資源が十分ではない地方で医療崩壊が多発しかねません」と警鐘を鳴らします。

都議選結果 示した民意

 大会直前の東京都議選(7月4日)では「五輪開催の中止」が大争点となり、自民党は史上2番目の大惨敗を喫し、小池百合子東京都知事が創設した都民ファーストの会も大きく議席を減らしました。「命が最優先」として五輪中止を掲げた日本共産党が前進し、中止・延期を主張した立憲民主党も躍進しました。

 緊急事態宣言を出しながら五輪開催を強行するという菅政権の矛盾したメッセージにより、「宣言」下の人流抑制は極めて不十分な状況となり、デルタ株の拡大と相まって感染爆発を促しました。

 “五輪一色”になったテレビを中心とするメディア報道にもかかわらず、五輪中止を求める声は最後までやみませんでした。閉幕前の6日には、東京五輪・パラリンピック中止を呼びかけている元駐仏大使の飯村豊さん、東京大学名誉教授の上野千鶴子さんら有識者の会が改めて中止を求める声明を発表。五輪を契機に爆発的感染拡大が始まり「人道的危機」とも言うべき状況を作りだしつつあると指摘しました。

 菅政権は3日、感染急増地で重症者と重症化リスクの高い患者以外は中等症を含め自宅療養を基本とする方針を決定。必要な医療が受けられず自宅で亡くなる人が続出しかねない方針に、医療現場から怒りが噴出しています。感染爆発の中で医療崩壊を事実上追認し、最後は棄民するかのようなやり方です。間違った五輪開催の強行は、間違いをより深刻なものにしています。

五輪開催の強行は菅政治の最悪の表れ

科学を無視、命をないがしろ

 五輪開催強行は、科学無視、説明拒否、自己責任論の持ち込みという菅政権のコロナ対策の致命的欠陥の最悪の表れです。

 世界各国の統計資料を分析しているウェブサイト「ワールドメーター」によると、人口100万人あたりのPCR検査実施数で日本は世界143位(7日現在)と最下位クラスです。こんなにも検査拡大が進まない原因は、科学を無視する菅政権の政治姿勢に原因があります。昨年5月、厚生労働省がPCR検査拡大に反対する内部文書を秘密裏に作成していたことが判明。国民が検査拡大を求めている時に「検査を拡大すると医療崩壊を招く」などのウソの議論を振りまき検査を抑制させてきました。

 「Go To」事業に固執し、感染を全国に広げた責任も重大です。昨年11月には専門家から中止の決断を迫られましたが、年末まで引きずり、その結果「第3波」を招く事態となりました。

国民に説明せず

 菅政権のもとで、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など、首相が国会に報告すべき機会は今年1月以降、20回ありましたが、このうち首相が国会に出席したのはたったの2回です。全国の新規感染者数が1万人を超え、専門家が「経験したことのない感染拡大」と警鐘を鳴らす中でも出てきませんでした。野党は緊急のコロナ対応のために憲法に基づく臨時国会召集と、首相出席の予算委員会の開催も求めましたが、これも拒否。国民に説明を行う意思も能力もありません。

 そのため、感染拡大は抑止できず、もっぱら強権に頼りきりです。飲食店の酒類提供をめぐり、金融機関や酒類販売業者を通じて「働きかけ」を要請。酒類提供をやめない飲食店との取引停止を求める「事務連絡」まで出しました(その後、撤回)。不当な脅しで国民を締め付けています。

減収補てん拒否

 菅政権は、個々人の努力ではどうしようもないコロナ対策にまで「自己責任」論を持ち込んでいます。緊急事態宣言を4回も発令しながら、事業者への十分な補償は行っていません。中小業者の「命綱」だった持続化給付金と家賃支援給付金はたった1回で打ち切り、再支給には後ろ向きです。医療機関への減収補てんも拒否し続けています。

 あげくの果てには、入院対象を限定し「自宅療養」を基本とする方針を発表。感染拡大の抑止、必要な病床の確保を怠ってきた責任を放り出し、「命の保証は自己責任で」と国民を突き放す無責任で乱暴な方針です。国民や与野党から厳しい批判を受けても方針を撤回していません。

 東京五輪開催の強行をめぐって菅首相は“五輪と感染拡大はつながらない”と繰り返し、国民に誤ったメッセージと根拠の無い楽観論を振りまいてきました。しかし、政府分科会の尾身茂会長は、五輪が「人々の意識に与えた影響はある」(5日、参院厚労委)と指摘しています。開催都市の東京で緊急事態宣言が出され、感染が急増しているさなかに強行したことは最悪の暴挙です。

 失敗から学び、次の対策に生かす姿勢がないことからも菅政権に国政を担う資格がないことは明らかです。

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