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2021年8月4日(水)

主張

熱海土石流1カ月

被災者支援と再発防止策急げ

 静岡県熱海市の伊豆山(いずさん)地区で大規模な土石流が発生して3日で1カ月となりました。これまでに22人の死亡が確認され、依然5人が行方不明です。現場では大量に積もった土砂やがれきの撤去作業が続くものの、捜索は難航しています。住宅は131棟が被害を受けました。自宅を流されたり、立ち入り規制地域に住居があったりする約300人は避難先のホテルで暮らしています。罹災(りさい)証明書発行など生活再建に向けた動きも始まりました。暮らしの先行きに不安を募らせている被災者の気持ちに寄り添い、希望の持てる支援を強めることが重要です。

安心できる住まい確保を

 被災者支援で急がれるのは住まいの確保です。甚大な被害を受けた地域にすぐに戻って暮らすことは、なかなかできません。ホテル利用は期限があります。避難生活の長期化が予想されますが、平地が少ない熱海市では応急仮設住宅の建設は困難とされています。

 県と市は公営住宅や民間賃貸住宅を用意し入居募集を始めました。期限を区切るのでなく、被災者に安心できる住まいが十分保障されるよう、国と自治体が一体となって支援することが不可欠です。

 ホテルでの生活では、住民同士の交流がつくりにくいことが課題となっています。悩みや要望を出し合える場が必要です。知り合いが少ない公営住宅などに移った人が孤立を深めることがあってはなりません。すでに心のケアや健康維持にあたる医療の支援チームが活動しています。継続して取り組めるよう体制整備をすすめることが大切です。

 住宅再建のため被災者生活再建支援法を拡充し公的な支えを強めることを真剣に検討すべきです。

 熱海市の基幹産業である観光は風評被害で打撃を受けています。すでにコロナで客足は激減しており、深刻な二重苦になっています。苦境に立つ業者を支えるため、国は財政支援などに踏み切ることが求められます。

 土石流を引き起こし、被害を拡大させた原因究明は欠かせません。県は、崩落した土砂の多くは土石流の起点部分で造成された盛り土だという見解を示しています。

 県外の業者が届け出をはるかに上回る盛り土をしていたことが判明しています。排水機能も整備していなかった疑いが濃厚になっています。「人災」としての様相が強まる中で、被災者から、造成業者とともに県と市に損害賠償請求を検討する動きが出ています。

 なぜ土砂災害の危険がある区域に、大規模な盛り土が造成され、行政によって是正できなかったのか。徹底的に検証し、責任が明らかにされなければなりません。

危険箇所の点検と対策を

 盛り土が大雨で崩れて被害を生んだケースは全国各地でありました。盛り土の規制が自治体ごとの条例などに委ねられ、規制する国の法律がないことが問題視されています。規制の厳しい自治体から規制の緩い自治体に土砂が運ばれ、危険な盛り土がつくられることも少なくありません。国による対策強化が急務です。政府は全国的な盛り土の点検・調査を開始しました。危険箇所を直ちに洗い出し、被害を招かない対策をとるべきです。台風シーズンが近づいています。悲劇を繰り返さないために知恵と力を注ぐ時です。


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