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2021年7月10日(土)

主張

熱海の土石流被害

危険箇所の点検と対策が急務

 静岡県熱海市で大規模な土石流が発生して1週間がたちました。安否不明者の懸命な捜索が行われていますが、断続的な雨や大量に積もった土砂などに阻まれ難航しています。避難生活で体調を崩す人も出てきています。水道などライフラインも完全に復旧していません。人命最優先で捜索を急ぐとともに、被災者の苦難に寄り添った支援を強めることが必要です。

 土石流の要因については、起点部分の「盛り土」が甚大な被害を招いた可能性のあることが濃厚になっています。再発防止のため、原因の究明と対策を講じることが重要な課題となっています。

崩落土砂の多くは盛り土

 静岡県は8日、土石流被害をめぐって、崩落した土砂の多くは起点部分で造成された盛り土と考えられるとの見解を示しました。

 盛り土の量は、土地を取得した業者が熱海市に申請した時の1・5倍にのぼっていました。盛り土の高さは届け出の15メートルをはるかに超える約50メートルだったことなども判明しました。県の条例で義務付けられた排水設備が未設置だった疑いも強まっています。

 盛り土には、プラスチック片などの廃棄物もまざっていました。県と市は、業者が不適切な行為を繰り返していたため、行政指導をしていたといいます。一般的に盛り土は、自然の地盤よりも強度が弱いとされています。適正に造成されていなければリスクは一層高まります。

 大規模な土石流が人的要因も重なって引き起こされたとすれば、極めて重大です。危険な盛り土が、土砂災害警戒区域に指定された地域周辺になぜ存在していたのか。業者がどのようにして造成したのか。県や市の対応の検証を含め、原因の徹底究明が不可欠です。

 熱海市の土石流の起点部分を調査した研究者は、現場にはいまも人為的に埋めた土が大量に残されており、今後の大雨で土砂流出や土石流が発生する危険性があると警告しています。緊急に防止策をとらなければなりません。

 過去にも大雨や地震で盛り土が崩れ、被害をうむケースが全国各地で起きています。国土交通省は2018年に全国調査を開始しましたが、対象の盛り土は宅地だったため、熱海市のような盛り土は含まれていません。同省は今回の土石流災害を受けて、対象を広げて「総点検」するとしています。危険箇所を早急に確認し、被害を起こさないように補強するなどの措置が急務です。

 建設工事で発生する残土を使った盛り土などを規制する仕組みの検証は欠かせません。自治体頼みにするには体制上の無理があるとの指摘があります。JR東海のリニア中央新幹線工事で生じる大量の残土をめぐって周辺住民から不安と懸念が相次いでいます。自然災害を「人災」に拡大させないために国は残土・盛り土対策で責任を果たすべきです。

命を守る取り組み不可欠

 梅雨前線の影響による発達した雨雲によって中国地方や九州地方で猛烈な雨が降り、川の氾濫や冠水、土砂崩れなどの被害が起きています。今後も全国的に大雨への厳重な警戒が必要です。ハザードマップで住民に地域の危険を周知徹底し早期避難を促すことや高齢者世帯の避難支援など、命を守る取り組みが強く求められます。


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