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2021年6月6日(日)

主張

接待調査報告書

行政をゆがめた大本にメスを

 放送関連会社「東北新社」やNTTなどによる接待問題を調査していた総務省は4日、32人が延べ78件の違法接待を受けていたとして処分したと発表しました。同省の第三者検証委員会も同日、東北新社の外資規制違反をめぐり「行政をゆがめたとの指摘は免れない」などとする報告書をまとめました。しかし、総務省調査も検証委の報告書も、東北新社に勤める菅義偉首相の長男・正剛氏のかかわりについては明らかにしていません。行政がゆがめられた背景や動機など疑惑の大本にまでメスを入れなければ、癒着の根を断ち切ることはできません。

疑惑はますます深まる

 一連の接待問題で武田良太総務相は「放送行政はゆがめられてこなかった」と繰り返してきました。報告書が「ゆがめた」と記したことで、武田氏の発言が厳しく問われます。外資規制違反についても報告書は、2017年8月に総務省の担当課長が「違反の事実を認識していた可能性が高い」と結論づけ、「記憶にない」と否定する同課長らの主張を退けました。違反は省内で共有されていたともされます。違反を知りながら同社を処分せず、事業継続を認めた経過をめぐる疑惑は深まりました。

 担当課長は東北新社から繰り返し接待され、野球チケットも受け取っています。報告書は、会食で外資規制に触れた事実は確認されなかったとしつつも、「会食の積み重ねや長い付き合いにより」「馴(な)れ合い意識やムラ意識が醸成」されることを問題視しました。接待が繰り返される総務省の体質そのものに切り込む解明が必要です。

 総務省の調査で、これまでよりさらに多くの接待件数と処分職員数が膨らんだことは、同省が接待にどっぷり漬かっていた実態を改めて浮き彫りにしました。78件のうち53件と突出しているのは、ドコモを含むNTTグループ関係です。菅政権の目玉政策である携帯電話料金値下げとの関係などが明らかにされなければなりません。

 その次に19件と多いのは東北新社でした。外資規制を担当した先の担当課長の出席はうち6件を占めていました。

 菅正剛氏が多くの東北新社の接待に参加したことについても究明が欠かせません。同社の調査報告書(5月24日公表)は「総務省での職務経験等」があり、「懇親の意義が高まる」と記載しています。菅首相が総務相時代の大臣秘書官だった正剛氏の存在がどう影響したのか、あいまいにできません。

 他にも事業者名を公表していない複数の事業者による接待も確認されました。政治家の介在も含め、接待疑惑の全容を明らかにすることなしに、国民の信頼は得られません。

国会での究明が不可欠

 農林水産省も3日、吉川貴盛元農水相と鶏卵大手アキタフーズの贈収賄事件や接待問題について第三者委員会の検証報告書を公表しました。アキタフーズ元代表と元農水相、農水省幹部の関係について、政官業の距離が近いことや国民目線から見て不透明であることを挙げたものの、政策はゆがめられていないとしました。しかし、国民の疑念は消えていません。

 総務省でも農水省でも第三者委員会の調査では限界があります。国会に関係者を招致し、徹底解明をすることが求められます。


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