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2021年6月3日(木)

社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(3)

「税金の集め方、使い方」の大改革を

日本の借金

どのようにとらえ、解決していけばいいのか

 愛知県の学生班 私たちは大学で福祉を学んでいます。班会の中で医療や福祉の分野にもっと予算を拡充してほしいという声がよく上がるのですが、そういうことを話すと、日本は多額の借金を抱えているからそんなところにお金は回せないんだという意見をしばしば耳にすることがあります。そもそもこの日本の借金はどういうものなのか、また、それをどのようにとらえて解決していけばいいのかということを教えてほしいです。

 志位 とても大事な問題だと思います。国と地方の借金(長期債務)は、2020年度末で1158兆円、対GDP(国内総生産)比で216%となっています。日本は、OECD(経済協力開発機構)の国ぐにで、断トツで借金が多い国になっています。

借金増はなぜ――「社会保障のため」はうそ、公共事業の浪費、大企業・富裕層減税が原因

 志位 借金の問題を考えるときに、なぜ借金がつくられたか、ここから考える必要があると思います。自民党や財界などは、「社会保障にお金を使いすぎたからだ」という議論をすぐしますでしょう。これはうそですよ。

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 (パネル3)これを見てください。GDP比での社会保障支出の国際比較です。フランスが32・1%、ドイツが27・7%、アメリカが24・9%に比べて、日本は22・9%といちばん少ないじゃないですか。これを、アメリカ並みにしただけでも約10兆円、増やせます。ドイツ並みにしたら約25兆円、フランス並みにしたら約50兆円、いまの経済規模でも社会保障支出を増やせます。ですから、「社会保障にお金を使いすぎたから」というのはうそなんです。

 なぜ巨額の借金ができたかというと、二つ原因があります。

 第一は、1970年代から90年代のことですが、無駄な公共事業に巨額のお金を使い続けた時期があります。90年代には、年間50兆円も公共事業に使って、社会保障が20兆円だった時期もあって、私たちは「逆立ち」財政だといって、ずいぶん批判したんです。この時期に、無駄な公共事業にお金を使い続けて、30年間で借金が約300兆円も増えてしまいました。これが第一の原因です。

 第二に、2000年代に入りますと、さすがに無駄な公共事業に野放図にお金を注ぎ続けることができなくなった。今度は、公共事業に代わって、借金の最大の原因になったのは、大企業と富裕層の減税でした。

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 (パネル4)これを見てください。1989年に消費税が導入されてから、今日まで、33年間で国民は消費税を累計で447兆円も払っています。ところが、法人税(3税)は累計で同じ時期に326兆円も減っている。所得税・住民税は累計で287兆円も減っている。大企業と富裕層への減税のために、これだけ税収に穴が開いてしまったんです。合わせて約600兆円でしょう。これでは、消費税をどんなに払ったって、穴の開いたバケツに水を注いでいるようなもので、借金がどんどん増えてしまいました。これが二つ目の原因です。

「税金の集め方、使い方の改革」で、暮らしを良くしながら、借金解決の道筋もつける

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 志位 それではどう解決するのか。今の事態の改善はもちろん必要です。ただ、「借金をすぐ返す」とか、「借金の額自体をすぐ減らす」などは、無理なことになります。追求すべきは、「借金が多少増え続けたとしても、経済がそれ以上に成長し、GDP比でみた借金残高は低下していく」というところにあります。そうした方向に進む必要があるというのが、私たちの考えです。

 そのさい、コロナ対策と、通常の財政運営を分けて考える必要があります。

 コロナ対策というのは、一時的なものです。一時的なものに終わらせなければなりません。これは借金をしてでも、必要な対策はどーんとやって、命と暮らしを守る。そういう姿勢が必要です。

 そのうえで、社会保障の財源とか、消費税減税の財源というのは、私たちは、「税金の集め方、使い方を改革する」ことで賄っていこうと、こう考えています。

 (パネル5)これをご覧ください。これは、企業の規模別の法人税の実質負担率です。大企業は中小企業に比べて負担率が低いでしょう。小規模企業や中堅企業の負担率はだいたい20%程度、大企業は10%程度で半分しか払っていない。これは、おかしいですよね。大企業には、いろいろな優遇税制があります。そのためにこんな不公平なことが起こっているんです。私たちは、大企業への優遇税制を正し、法人税率はこの間、23%まで下げられてきましたけれども、大企業については安倍政権前の28%まで戻そうということを主張しています。

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 (パネル6)もう一つは、このグラフを見てください。これは有名なグラフなんですが、所得階級別の所得税負担率のグラフです。わが党の大門実紀史参議院議員が最初に作った。そして、今は財務省も使っている(笑い)というグラフなんです。このように、年収1億円を超えると、所得税の負担率が大金持ちになればなるほど下がっていってしまう。これも、おかしいですよね。なぜそうなるかというと、株取引などにかかる税が軽い。それにくわえて、所得税の最高税率が下げられてきた。こういう大金持ちへの優遇税制を正し、最高税率を上げていくことによって財源をつくろうというのがもう一つなんです。

 税金の使い方の方も、5・4兆円まで膨れ上がった軍事費や公共事業の無駄にもメスを入れる。

 そういうもろもろの改革で、暮らしを良くすることで、経済成長を実現し、税金の増収をはかる。

 私たちの試算では、合計26兆円程度の財源をつくれます。26兆円のうち、12兆円で消費税5%への減税をやる。さらに暮らしを良くする仕事をやる。暮らしを良くしながら借金の問題も解決する道筋をつけていく。こういうプランを示しています。

大企業と富裕層にしかるべき税金を――コロナ危機のもと世界の流れに

 志位 最後にこの問題で一つ言っておきたいのは、世界の流れも私たちが主張しているような方向にむかっているということです。

 いま、コロナ危機のもとで、日本でも世界でも超富裕層がものすごくもうけています。そうしたなかで大企業と富裕層にしかるべき税金を払ってもらおうという動きが世界中で起こっています。

 バイデン米大統領は、トランプ政権が21%まで下げた法人税を28%まで戻すと言っています。日本共産党と同じ28%です。先に言ったのは日本共産党ですけれども(笑い)、それをアメリカの民主党がいま言いだした。これはいいことですから、日米協調で法人税を引き上げて、ちゃんと払ってもらえるようにしたい。

 世界の流れからみても道理のある道なんです。こういう方向で、きちんと財源の問題も考えながら、暮らしを守っていきたいというのが私たちの考え方です。

「借金を増やしても心配はいらない」という立場にはくみしない

 中山 では、学生の方から質問などありますか。

 学生 ありがとうございます。借金について調べているときに、「日本の円は信頼があるから、借金はとくに問題がないんだ」という意見だとか、そういうものをよく耳にするんですけれど、そういうものについてどうとらえたらいいのか、また、共産党はどう考えているのかを教えてください。

 志位 私たちは、「借金を増やしても心配はいらない」という立場には、くみしません。たしかに、日本の場合は、借金のほとんどは外国ではなく、国内で借りたものですし、いざとなれば日本銀行がお金を発行して国債を買ってしまうこともできます。しかし、「財政破たん」というのは、「借りたお金が返せない」ということにかぎらず、別の形で起こることもあるんです。

 いざとなれば日銀がお金を発行できるといっても、好き勝手にいくらでもできるわけではありません。お金というのは、物やサービスを売り買いするための手段ですから、物やサービスの流通量に見合ったお金の量が必要になります。物やサービスとの関係で、お金ばかりがどんどん膨らんでいったらどうなりますか。お金の価値が下がってしまいますね。お金の値打ちが下がるということは、「インフレ」になるということです。

 多少の「インフレ」ならともかく、年に10%とか20%もの急激な「インフレ」になったらどうなるか。そうなると、働く人の実質賃金がどんと下がってしまう。あるいは、なけなしの貯金もぼーんと目減りしてしまう。国民にとっての大被害が起こります。戦後の一時期、ものすごい「インフレ」が起こって、そういう大被害が起こったことがありましたが、そういう問題があるのです。

 「インフレになったら、その時は政府の財政支出を減らしたり、増税したりして、借金が増えるのを減らせばいい」という議論がありますが、これは理屈ではそうだったにしても、実際にはできません。「インフレ」で物価が上がって、ただでさえ暮らしが苦しくなっているときに、「消費税を増税する」とか、「社会保障を削る」ということをしたら、暮らしの破壊に追い打ちをかけることになってしまいます。

 ですから、私たちは、「借金を増やしても心配ない」という立場にくみするわけにはいかないということを、言いたいと思います。

 大企業、富裕層にきちんと税金を払ってもらって、あるいは、5・4兆円にもなった軍事費にメスをいれて、財源をつくっていくという道を進みたいと思います。財政について考えの違う人とも、そういう点は一致すると思うんですよ。そういう一致点で協力するということもやっていきたいと思います。

経済停滞の原因は、借金を増やしても、国民の暮らしのために使われていないから

 中山 なるほど、お金をいくら刷ってもそのお金がどこから出て、どこに使われるかという仕組みが変わらないと意味がないということでしょうか。

 志位 そうですね。「日本経済が停滞しているのは、政府の借金が少なすぎるからだ」という議論がありますが、経済が停滞している原因がどこにあるかといえば、借金を増やしても、それが国民の暮らしのために使われていない。先ほどお話ししたように社会保障に回っていない。ゼネコンをもうけさせるための公共事業や、大企業・富裕層への減税だとかに使われてしまったからです。日本経済を良くするためには、ただむやみに政府の借金を増やすというのではなく、「税金の集め方、使い方」を全体として改革していくことが大切です。あわせて、派遣・パート・アルバイトなど、「使い捨て」の労働を広げてしまった雇用の規制緩和を大もとからただしていくことが必要です。(つづく)


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