しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年6月3日(木)

「相馬モデル」で接種が迅速進行

会場一つに集約し地区ごとに日時指定

福島

 福島県相馬市は、市が10ある各地区ごとに日時を指定し、市役所に近接するスポーツ施設を会場として集団接種を行う独自の「相馬モデル」で、新型コロナウイルスワクチンの接種を進めています。1日には19~64歳で基礎疾患のない「一般」の市民約1万3500人を対象とした接種を全国に先駆けて開始しました。


写真

(写真)相馬市のスポーツ施設を活用した集団接種会場。3レーンに分かれ、密になりにくいレイアウトとなっています(田中智己撮影)

 全国の市区町村で高齢者接種がようやく本格化するなか、同市では65歳以上への接種は5月1日に始まり、接種を希望する高齢者およそ9700人のうち約85%がすでに1回目を終了。2回目の接種は、同22日に開始し、2811人が接種しました。市によると、64歳以下も含め、7月中にはすべての世代でおおむね接種が実施できる見通しです。

 国が当初打ち出した希望者による病院での事前予約方式に対し、市は日時を指定して集団接種する「相馬モデル」を昨年12月に決定。国と異なる方針にした理由について、市保健福祉部の原史朗部長は「インフルエンザワクチンの時は、100件でパンクした。病院での個別接種方式では、完了までに数年かかる」と試算したことにあると説明しています。クリニックなどでは、接種直後の経過観察をするスペースの確保が難しいなどの事情から、一人ひとりの接種完了に時間がかかってしまいます。また感染者が発生した場合、クリニックが閉鎖されてしまう恐れも浮上しました。

 原氏は、「地域によって事情は異なるが、相馬市の場合は限られた医療資源を守るためにこの方法しか考えられなかった」と話します。

 相馬モデルのように一つの会場に集約し、日時を指定して行う方法には、(1)決めた時間枠で人数を想定でき、ワクチン希釈など準備に無駄がなく、余りにくい(2)ワクチンが余った場合、事前に作成した接種候補者を急きょ呼ぶことが容易(3)重度の副反応が出たとき、設備のそろった病院が近く、救急搬送が短時間で可能(4)高齢者など接種会場への移動が困難な人に、ミニバスを活用した送迎が地区ごとにできる―などの利点もあります。

地域の医療連携 実現のカギ

 なぜ、相馬モデルが実現できたのか。昨年4月、新型コロナの感染拡大を受け、市は発熱外来センターを設置。開業医が当番制で担当医を務めていました。こうした日頃からの行政と地域医療の密接な連携が、効率的な集団接種を可能にしました。接種の可否を判断する予診は、かかりつけ医から寄せられる情報をもとに行います。当日は血圧測定や血中酸素飽和度の確認など最小限ですむため、接種までの流れをスムーズに実施できるようになりました。

 19~64歳の「一般」市民への接種の初日、集団接種会場を訪れた19歳の男性会社員は「高齢者への接種が順調に進んでいるので、若い世代も早く打てた」と安心した表情を見せました。

 市は今後、19日に16~18歳への1回目の接種を開始する予定です。同世代への2回目の接種は、7月10日開始としました。高校生の多い世代であることから、発熱などの影響も踏まえて、接種は土曜日に。中学生への接種も検討中としています。(田中智己)


pageup