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2021年6月1日(火)

主張

性犯罪と刑法

遅れた規定の改正に踏み切れ

 刑法の性犯罪規定の改正に向け、論点を議論してきた法務省の検討会が21日、報告書をまとめました。法改正をめぐる議論は、法制審議会(法相の諮問機関)に移ります。性暴力被害の実態に即した改正に踏み出せるのか、政府の姿勢が問われます。

性被害当事者らが声上げ

 刑法の性犯罪規定は2017年、110年ぶりに改正されました。しかし、性暴力被害当事者の強い願いであった強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」撤廃は、この時には実現しませんでした。

 同意のない性交を強いられたにもかかわらず、「抵抗できないほどの暴行や脅迫があった」と認められなければ犯罪とされない―この理不尽極まる実態を変えてほしいと性被害当事者らは抗議の声を上げ続けました。不同意でも体が凍り付いてしまったり、地位関係性を利用されたりして抵抗できないのが性暴力の現実だからです。

 19年3月、性暴力加害者の無罪判決が相次いだのをきっかけに、4月から花やプラカードを持って集まるフラワーデモが始まりました。不同意の性交を処罰する方向で刑法改正を求める声が、全国に燎原(りょうげん)の火のように広がりました。

 20年4月に設置された法務省の検討会には、被害当事者や支援の専門家が委員として加わり、性被害の実相と国際水準に見合った改正の方向性として、▽不同意性交等罪の創設▽地位関係性を利用した性犯罪規定の導入▽性交同意年齢(現在13歳以上)の引き上げ―などの抜本改正を求めました。

 報告書は「性犯罪の処罰規定の本質は、被害者が同意していないにもかかわらず性的行為を行うことにあるとの結論に異論はなかった」と明記しました。「暴行・脅迫要件」見直しも「安定的で適切な運用に資するような改正であれば検討に値する」としました。今後につながる貴重な足がかりです。

 しかし、報告書は改正への消極論も併記し、数々の問題を先送りしています。不同意性交等罪の創設では「社会的に何を性的行為の同意と見るかが曖昧」であることを理由に、明確な方向性を打ち出しませんでした。教師と生徒、コーチと選手、上司と部下などの地位関係性を利用した性犯罪についても、「関係性は多様」であり「一律に処罰することは疑問」との意見が出され、一致していません。

 性交同意年齢も、アメリカは16~18歳、イギリスや韓国は16歳、フランスは15歳などに対し日本の13歳は低すぎるのに、結論は出しませんでした。16回にわたる検討会で積み重ねてきた到達点を後退させるのでなく、被害当事者が切望する改定を実現すべきです。

ジェンダー平等に不可欠

 国連は1993年に女性への暴力撤廃宣言を採択し、レイプなど女性に対する暴力を「防止し調査しまた国内法に従って処罰するためしかるべき努力を払う」ことを呼びかけました。各国はこれを受け、不同意の性交を処罰する方向で法律を改正してきました。しかし、日本の刑法はいまだに、性暴力から女性を守る視点でなく、家制度の秩序を守る観点から強姦(ごうかん)罪を定め、女性に「抵抗して貞操を守る義務」を課した明治期の家父長制の名残を引きずっています。遅れがはなはだしい規定の改正に踏み切ることは、ジェンダー平等の実現にとっても不可欠です。


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