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2021年5月25日(火)

主張

自民LGBT議論

「多様な性」否定の暴言許すな

 LGBT(性的少数者)に関する法案をめぐる自民党内の会合で、「種の保存に背く」「道徳的に認められない」など差別と偏見に満ちた暴言が相次ぎ、国民の怒りが広がっています。一連の発言は、法案にLGBTへの「差別は許されない」と書き込むことに反対する議員たちから出されました。いま必要なのは、多様な性のあり方を認める社会をどうつくるかという議論なのに、完全に逆行する発言が政権党内でまかり通っていることは重大です。LGBTへの差別をあおり、個人の尊厳を否定する暴言は放置できません。

差別と偏見をあおりたて

 自民党内で異論が出たのは、LGBTへの「理解増進」法案です。野党が提出したLGBT差別解消法案とすり合わせ、超党派提出の法案にするために、自民党が、目的・基本理念に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されないとの認識の下」との文言を盛り込むことで合意しました。

 これに対し20日の会合で、LGBTは「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」という趣旨の発言や、道徳的に問題であるとの意見が出されたことが報道されました。いずれも、性的少数者を社会的に排除するために使われてきた差別的な言辞であり、当事者を深く傷つける言動です。

 19日の会合では、山谷えり子元拉致問題担当相が自分の性をどう認識するかを意味する「性自認」について「体は男だけど(心は)女だから女子トイレに入れろ」などという「ばかげたことがいろいろ起きている」と述べました。職場などで過ごしやすい環境づくりを求めるトランスジェンダー(身体の性別と自分が認識する性別に違和がある人)の切実な願いを意図的にゆがめた発言です。

 山谷氏は、「女子陸上競技に参加して、ダーッとメダルを取る」ことが起きているとも言いました。これも偏見をあおりたてる典型的な議論です。スポーツ界では誰もがありのままの自分で競技に参加できる環境整備の努力が進んでいます。競技の公正さを保つためのルールは、大会や種目ごとに検討、制定されるべきものです。丁寧な議論を抜きに、差別感情をかきたてる主張を繰り返すことは無責任で悪質です。

 自民党では2018年、杉田水脈衆院議員が月刊誌にLGBTカップルは「『生産性』がない」と寄稿し、世論から厳しい批判を浴びたことがあります。同党は、杉田議員に甘い対応しかできていません。今回の数々の発言も同党内のLGBTへの差別・偏見の根深さを浮き彫りにしています。

 自民党議員の暴言に、LGBT法連合会は「当事者ばかりでなくその家族や友人など関係する人びとをも傷つけ、その存在を否定する、到底看過することのできない発言」と批判する緊急声明を発表しました。差別発言の撤回・謝罪を求めるオンライン署名は9万人に迫る勢いです。自民党本部前では抗議行動が取り組まれました。同党の姿勢が改めて問われます。

日本の立ち遅れの克服を

 世界80カ国が性的少数者に関する差別を禁止する法律を整備しているとされます。こうした法律づくりこそが日本に求められています。自民党内で暴言が後を絶たない現状を変えるためにも差別を許さない法律の制定が急務です。


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