2020年10月14日(水)
主張
杉田暴言と自民党
政党としての責任が問われる
自民党の杉田水脈衆院議員による「女性はいくらでもうそをつけますから」という性暴力被害者に対する暴言は、怒りをますます広げています。
被害者は、暴力そのものとともに、被害を誰かに訴えても信じてもらえなかったり、「あなたにも落ち度があったのでは」と責められたりすることにも、深く傷つけられています。その傷に塩を塗り込む発言をした杉田議員を不問に付す自民党の姿勢も重大です。
生きる意欲をくじく
3日に東京駅前・行幸通りで行われた緊急フラワーデモには、200人が集まりました。スピーチに立った人たちは口々に、「あの暴言を聞いて、『もう生きていけない』と追いつめられる被害者がいるだろうと思ったら気が気でなく、ここに来ました」と語りました。
昨年4月から続けられてきたフラワーデモでは、数年前、数十年前の被害体験を、初めて明かす人が多くいました。自分の言葉を信じ、苦しみに寄り添ってくれる人たちと出会えたことで、ようやく「自分は悪くなかった」「生きていていいんだ」と感じられたとの声が上がります。フラワーデモは、そういう実感を持つ人たちが大切に育んできた場であり、運動です。
被害者をうそつき呼ばわりする杉田議員の言葉は、生きる意欲をくじくほどの暴力性があります。極めて罪深い発言です。
フラワーデモは47都道府県に広がり、着実に世論を動かしてきました。刑法改正の検討会委員に被害当事者が選任されたことや、政府が「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を発表したことなども、その一例です。
杉田氏の暴言は、これまでのそうした積み重ねを否定することに等しい発言です。「発言撤回、謝罪、議員辞職」を求める署名が、短期間で13万6000人分を超えたことには、「この流れを決して逆戻りさせてはならない」という決意があらわれています。
ことは杉田議員個人の問題にとどまりません。比例代表選挙で公認し当選させた自民党にも、今回の暴言をどう考えるのか、どう党としての責任を果たすのかが問われています。
杉田議員は過去にも、人権や個人の尊厳を踏みにじる暴言を繰り返してきました。しかし、その都度、党からまともな指導も処分も受けず、国会議員であり続けています。今回の暴言についても、下村博文政調会長が口頭注意をし、杉田議員がブログで弁明したことですませています。オンライン署名も、党としての受け取りを拒否しています。
署名受け取り拒否に怒り
受け取り拒否の理由について野田聖子幹事長代行は「辞職という、実現できないことが書かれているものは受け取れない」と語っています。しかし、署名提出者が議員辞職を求めているのは、杉田氏の暴言が国会議員にあるまじき発言だという認識があるからです。その指摘を党として受けとめる意思すらないことは大問題です。署名受け取りを拒んだことに怒りはさらに広がっています。
杉田議員に毅然とした措置がとれない自民党の姿勢には、同党の根深い女性蔑視の体質が示されています。自民党政治を転換することなしにジェンダー平等社会を実現することはできません。