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2015年12月24日(木)

「金払って解雇」狙う安倍政権

厚労省の検討会始まる

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 厚生労働省が「解雇の金銭解決」制度についての検討会を設置し、議論が始まっています。裁判でこの解雇は不当であり無効だという判決が出ても、金を払えば労働者を解雇できるようにするのが政府のねらいです。 (昆弘見)


写真

(写真)解雇の金銭解決制度について議論した「解雇自由法制に反対する働く者の総決起集会」=4日、東京都内

反対意見 相次いで

 検討会は、政府がことし6月に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2015」と「規制改革実施計画」にもとづいて設置されたもので、労使の代表、学者、弁護士などが参加して10月29日に発足しました。

 第1回の会合で厚労省が示した検討事項の一つが「解雇無効時における金銭救済制度の在り方(雇用終了の原因、補償金の性質・水準等)とその必要性」です。裁判で企業が負けたときの金銭解雇制度を検討するということです。

 まだ検討事項も定まらない初会合なのに、委員のなかで一人、八代尚宏氏(昭和女子大学特命教授)が資料を提出しました。第一次安倍晋三政権の経済財政諮問会議で民間議員をつとめた労働分野の規制緩和論者です。

 資料は「解雇に関するルールの明確化について」と題したペーパー。「金銭解雇の基準を法律で定める」ことは「労働者を救済する有効な手段」とし、「法制化を速やかに進めるべきである」とのべています。「金銭解雇」とストレートに表現しています。会議でも、「立法政策に踏み込むのだということでないと、この会議をする意味がない」と突出した発言をしました。

 一方、検討会には連合代表のほかに、不当解雇に反対して活動している日本労働弁護団所属の弁護士らが参加しています。

 徳住堅治弁護士は、日本には多様な労働紛争解決システムがあるが、各制度の関連性が不十分だという問題点があり、いま検討が求められているのは各制度の関連性をつけていくことだとのべました。水口洋介弁護士は、労働者が裁判で勝っても会社に復帰する「就労請求権」がないために、あきらめて金銭解決に応じざるを得ないのが実態だとのべました。

 厚労省側は、連合代表の質問にたいして、金銭解雇制度をつくることを「前提とするものではなく」と答弁。「運用の改善と立法政策との両方をにらみながらご議論を」とのべました。

 検討会が、金銭解雇ルールにたいしてどのような報告をまとめるのか、こんごの議論が注目されます。

「解雇規制法」こそ

 日本は解雇を規制する法的ルールが非常に弱い国です。ドイツやフランスなどのような「解雇規制法」がありません。

 解雇については、労働契約法で「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に無効だとしています。「合理的な理由」とは何なのか、基準が抽象的であいまいです。

 解雇の規制ルールがあいまいなのに、金銭解雇制度だけをつくれば、金を出して労働者をクビにする企業が横行し、世界でも異常な解雇自由社会になりかねません。この制度は過去にも2002年、05年に財界の要求をうけて政府が導入しようとしましたが、世論の強い反対で断念しています。

 大量リストラ、「ロックアウト解雇」など不当な解雇・雇い止めが増えているいま、労働者を守る「解雇規制法」こそ必要です。

 規制法には、次のような内容を盛り込むことが期待されます。

 まず最高裁の判例などで確立されている「整理解雇4要件」(別項)を満たさない解雇は無効であると明確に定めることです。労働者に責任がない「整理解雇」は、きびしい規制が必要です。

 裁判で争っている間は雇用を継続し、解雇無効になったときに労働者が職場に復帰する「就労権」を保障することも大事です。

 「希望退職」を装った退職強要をやめさせること、工場閉鎖などの大量人員削減のさいには労働組合や自治体と協議するしくみも必要です。


 整理解雇の4要件 労働者には何の責任もなく、経営不振などもっぱら企業側の理由で労働者を解雇(これを整理解雇という)するときに、満たすことが求められる要件。(1)さし迫った解雇の必要性がある(2)解雇回避の努力が尽くされている(3)解雇者の選定基準、人選が公平、合理的(4)労働者、労働組合への説明義務をはたす。


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