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2014年11月6日(木)

“患者申し出”で混合診療

中医協総会が制度を承認

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 中央社会保険医療協議会は5日の総会で、患者の申し出によって、未承認の医薬品や医療機器などを使用できるようにする「患者申し出療養制度」について承認しました。

 現在、公的保険が利く医療と利かない医療を一緒に行う「混合診療」は原則禁止されています。ただし例外として、「評価療養」(先進医療など)「選定療養」(差額ベッドなど)を認めています。「申し出療養」は、これに三つ目の例外として導入するものです。安倍内閣が医療・製薬企業支援のため成長戦略で掲げており、来年の通常国会に法案提出をねらっています。

 総会で了承された仕組みは、対象となる医療として、(1)先進医療の実施計画対象外の患者(2)国内未承認薬や実施計画がない技術(3)臨床試験の対象とならない患者への使用―をあげ、大きく拡大する内容になっています。

 承認手続きは、「前例がない診療」と「前例がある診療」に区別。

 前例がない場合、患者が、臨床研究中核病院(全国15カ所)に申し出ます。同病院が国へ申請し、安全性や有効性、実施計画を原則6週間(現在6〜7カ月)で判断。審査は「持ち回り」でも認めます。

 前例がある場合は、申し出を受けた地域の医療機関が、前例を取り扱っている臨床研究中核病院へ申請。同病院が原則2週間(同1カ月)で審査します。安全性確認などが後退する危険性を抱えています。

 保険適用については新たな仕組みは設けていません。これまでの方針では「(適用に向けて)治験等に進むための判断ができるよう実施状況を報告」するにとどまっており、保険外に留め置かれる危険性を抱えています。

解説

国民皆保険空洞化、医療格差広がる

 中央社会保険医療協議会で了承された「患者申し出療養」は、原則禁止されている「混合診療」(保険・保険外診療の併用)をなし崩し的に拡大し、無差別平等の「国民皆保険」を空洞化させる危険なものです。

 これまで6〜7カ月かけていた審査が2〜6週間へと大幅短縮されるため、安全性や有効性が不確かな医薬品や技術が広がる危険性を抱えています。しかも、臨床試験の対象にならない患者への使用まで認めています。

 厚労省は、薬害や医療事故に備えて民間保険に加入させる方針ですが、危険性を認めたようなものです。患者団体が「安全性、有効性が担保できるか懸念はぬぐえない」(日本難病・疾病団体協議会)と指摘する通りです。

 先進医療は現在101種類ありますが、自己負担が100万円を超えるのはざらで、高額なものばかりです。

 しかも、保険適用されたものはわずかで、多くは保険外にとめ置かれています。50万円以上かかる多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、年間5200件以上利用されていますが、保険適用されていません。陽子線治療も、年間250万円以上かかるものながら毎年2000件以上利用されていますが、未適用のままです。経済的に負担可能な人は限られ、患者の経済力によって受けられる医療に格差が生じることになってしまいます。

 保険適用になれば治療が進んで結局は医療費節減にもつながり、開発した企業にとっても広く普及したほうが利益につながるものです。患者団体は「必要な医療は、速やかに保険収載をして誰もが安心して最高水準の医療を享受できることが私たちの願いです」(同)と声を上げています。保険外診療の拡大ではなく、保険適用によって国民皆保険を豊かにしていくことこそ必要です。

 (深山直人)


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