2014年5月31日(土)
主張
労働時間規制破壊
「過労死促進」に政府が拍車か
安倍晋三政権が6月に決める新しい「成長戦略」で、週40時間を基本にした労働時間の規制に大穴をあけ、時間ではなく「成果」で賃金を決める制度を導入しようとしています。「成果」を出すために、「残業代ゼロ」で何時間でも働かせることにもなるもので、文字通り、異常な長時間労働を野放しにし拍車をかけるものです。かつてない労働法制の大改悪に、労働組合や法律関係者などからの批判が上がっています。安倍政権は対象になる労働者を限定するなどとしていますが、労働に関わる大原則をいったん崩せば、それこそ取り返しがつかないことになります。
“亡霊”の復活そのもの
労働基準法は第32条で、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」「各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と定めています。労働法制の大原則です。それにもとづき労働基準法第37条では、使用者が労働組合との協定などで労働時間を延長したり、休日に労働させたりした場合には、割増賃金を支払わなければならないと定めています。
1886年5月1日、アメリカのシカゴでおこなわれた第1回メーデーが「8時間労働制」を要求したように、8時間労働の大原則は、世界の労働者が長年にわたってたたかい、実現してきたものです。その大原則をそうやすやすと「緩和」し、別の原則にかえていいはずがありません。
安倍政権は第1次政権時代の2007年にも、労働時間規制を掘り崩す「ホワイトカラー・エグゼンプション」(管理労働者への適用除外)制度の導入を持ち出し、「残業代ゼロ」「過労死促進」に道を開く制度だと非難を浴びました。今回の「成長戦略」で打ち出そうとしている、労働時間ではなく「成果」で賃金を評価するという制度の導入は、まさにいったん失敗した「残業代ゼロ」を復活させる、“亡霊”そのものです。
もともと労働時間への規制を破壊し、時間ではなく「成果」で評価するよう求めてきたのは財界・大企業です。労働時間規制がなくなれば、労働時間も残業代も気にせず働かせることができるからです。安倍首相は28日の産業競争力会議で、「対象を絞り込む」などとのべましたが、会議で報告した経済同友会代表幹事でもある長谷川閑史(やすちか)主査は、「中核・専門的人材」とともに「将来の経営・上級管理職候補」を対象にすると提案しました。「将来の管理職候補」まで含めるとなれば対象はどこまででも膨らむことになり、労働者への打撃は計り知れません。
「サービス残業」規制こそ
日本では現在、「8時間週40時間労働」の大原則がありながら、世界でも異常な長時間労働がまかり通り、政府の統計でも12年の総労働時間は1765時間と欧州各国より数百時間長くなっています。残業させても割増賃金を払わない「サービス残業」や、労働者を働けるだけ働かせて「過労死」や退職に追い込む「ブラック企業」もあとを絶ちません。
労働時間の規制を破壊するのではなく、厳しく守らせることこそ求められるのは明らかです。安倍政権の労働法制改悪での暴走はやめさせるしかありません。